断罪ざまぁも冴えない王子もお断り!~せっかく公爵令嬢に生まれ変わったので、自分好みのイケメン見つけて幸せ目指すことにしました~

第35話 泣き寝入りは性に合いません

 空間が歪んで、浮いた足がすぐまた床についた。
 気づけばどこかの部屋にいて。
 鼻をつく消毒液のにおいに、保健室なんだってすぐに分かった。

「ひとまずは座ってくだされ。いま茶でも入れますのでな」

 まだ頭が働かなくって、言われた通り丸椅子に座った。
 遠くから学園祭の喧騒(けんそう)が聞こえてくる。みんなたのしそうでいいな。なんでわたしだけがこんな目に。
 そんなふうに思ったら涙があふれて止まらなくなった。

「よかったらお使いくだされ。なに、ちゃんと洗った新品ゆえ、心配には及びませんぞ?」
「あ……りがと……ございます」

 目の前に飛んできたふわふわのタオルを受け取って、ぎゅっと眼がしらに押し当てた。

(キスくらいでこんな泣くことないじゃん)

 山田に涙を見られたことが、なんだか急に悔しく思えてきて。
 落ち着いてきたら、今度はふつふつと怒りが湧いて来た。

(そうよ、なんでわたしが泣かなきゃなんないの?)

 悪いのはぜんぶ山田だ。
 どうせ殴るなら、平手打ちじゃなくてグーパンチにすればよかった。

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