幼なじみは狐の子。
3星祭り




 朝のホームルーム前、恋がロッカーに鞄を仕舞っていると、ガラガラと戸を開けて理央が入ってきた。



「おはよ、恋」

「おはよう」

「ねえ、聞いた?」



 理央はいきなり声を潜めた。



「2組の黒沢さん、西木くん振っちゃったんだって。」

「えっ?」

黒沢香凛(くろさわかりん)ちゃん、恋知ってるでしょ。あの超お洒落で、恋の話だーい好きな。西木くん辞めて、今度は原くんに告白するんだって。自分から告白したのに、酷いよね。」



 黒沢香凛は、隣のクラスの女子だ。

 美術クラブ所属で、恋とはあまり話をした事がなかったが、学校で告白騒ぎを起こしたことで、学年で名前が知られていた。



「前の時追っかけ過ぎて大騒ぎだったのに。」

「私ああいう人嫌。西木くんせっかく付き合ってくれたのにプライド丸潰れじゃない。恋、今日休み時間西木くん慰めに行こう。」

「いいよ。」

「あーあ、もうすぐ夏休みなのに嫌な話聞いちゃった。黒沢さん、星祭りも原くん誘っていくらしいよ。」

「ふーん」

「噂に拠れば、星祭りで星を見ながら告白すると、一生相思相愛で居られるんだって。雑誌にもいつも載ってて、結婚式のサイトとかにもよく出てくるんだ。この辺で一番有名なお祭りだし、結構信憑性高いらしいよ。」

「黒沢さんはまた告白するのかな?」

「みたいだよ。本当かわいそうだよね。」




 恋と理央が星祭り、と話すのを聞いて、斜め後ろの席で頬杖をついていた宗介は、ちょっと考え顔をした。


 宗介は、今年の星祭りに恋を誘う予定だった。

 お祭りには毎年恋を含めた友達数名で行くが、宗介は今年は恋と2人きりで行くつもりだった。

 そのために宗介は友達からの誘いを断っていたが、タイミングがなくて、恋をまだ誘っていなかったのだ。


 やがてチャイムが鳴って朝のホームルームが始まった。

 
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