クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
 俺は恥ずかしくて海雪をぎゅうっと抱きしめ顔を見られないようにしながら口を開く。

「照れていたんだ」
「照れて……?」

 聞き返してくる海雪の声に、余計に羞恥心が増す。耳朶までも熱い。

「好きな女性に素直になれなかっただけだ。……笑ってくれていい。子どもができたから愛し始めたんじゃない。最愛の女性が俺の子を宿してくれている奇跡が嬉しくて幸福でたまらなくて、ようやく感情を素直に表せただけなんだ」

 そう告げてから、恐る恐る海雪の顔を覗き込む。
 息を呑んだ。
 海雪の頬はこれでもかと真っ赤に染まっている。それどころか、耳も、首筋も、白い肌は見える範囲すべてが血の色をうっすらと透かしている。大きな目は潤んで、なんども瞬きを繰り返していて。

 目を見開く俺に、海雪は小さな手で自分の顔を隠しながら「その、あの」と不明瞭に言葉を繰り返す。心臓が大きく拍動する。

 喉元まで湧き上がってくる強大な感情に涙が滲みそうになる。

「海雪」

 俺は愛おしい名前を呼びながら顔を隠そうとしていた彼女の細い手首をつかむ。じっと目をみつめ、逸らさせないままはっきりと口にした。

「愛してる。どうか、俺と恋をしてくれないか」





 そこから海雪は挙動不審になった。
 正確には、なんというかそう、海雪と見合いしたばかりの俺状態というか。まあ表情や声や雰囲気がふわふわしていて、明らかに俺を意識しているのがまるわかりで、俺としては非常に嬉しい。海雪かわいいしか考えられない。

 だからついつい、あえてちょっかいをかけてしまう。

「ただいま、海雪」
「おかえりなさい……っ」

 仕事から帰宅すれば、嬉しげに玄関まで迎えに来てくれるかわいらしい妻に胸がきゅんとする。甘い焼き菓子のにおいも……。

 このところ、海雪はよく焼き菓子を作る。マドレーヌだとか、カヌレだとか、パウンドケーキだとか。市販のものを食べるとカロリーが高くなりすぎるので自作しているようだが、ほとんどはフォックス夫人だとか、隣近所の奥様方にプレゼントしているらしい。なかなか好評なようで、わざわざ俺まで引き留められて礼を言われたり、お礼だと家に招かれたりしているようだった。俺もいくつかご相伴に預かったが、甘さ控えめでとてもおいしい。

『うまい』
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