クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
 天城さんは立ち止まり、私をじっと見つめてまた微かに眉を寄せた。ひええと脳内で叫んでしまう。かわいい結婚式なんて、天城さんは望んでなかったよね。ごめんなさいと言いかけた私に、天城さんはしっかりと頷いた。

「わかった。かわいい式だな」

 生きていて一番目を丸くしたかもしれない。
 天城さんはそんな私に背を向けてまた歩き出す。広い背中を追って、私もまた歩き出す。
 天城さんがふと歩くスピードを緩めた。私に合わせてくれたらしい。

「す、すみません。遅くって」
「いや、悪い。少し早足なんだ、俺は……その、仕事柄」

 仕事柄と聞いてドクターを思い出し、それから彼の自衛官という職務も思い出した。ドクターはともかく、自衛官は天城さんしか知らないけれど、たしかにキビキビしたイメージはある。

「天城さんは、自衛隊ではどんなお仕事を?」

 お見合いのときも聞いていたけれど、さらりと「医官です」としか教えてもらっていなかった。でもいまならもう少し踏み込めるのかな? と思い切って聞いてみたのだ。
 思った通り、天城さんは「普段は基地で診療していて、たまに護衛艦に乗ってる」と教えてくれた。

「横須賀ですよね」
「ああ」
「忙しいですか?」

 聞いてから、そりゃあ忙しいだろう、と思う。
 天城さんがうちの病院に技術研修に来る頻度は、ちょっとまちまちだ。というのも訓練中などは当然来られないし、その訓練期間もどうやら数ヶ月単位らしいと知っていた。

「忙しいのは忙しいが……今は休暇中だ」
「そうなんですか?」
「長期の訓練のあとは、しばらく休暇がある」

 そう教えてもらったのと、彼が立ち止まったのは同時だった。
 高級ブティックが並ぶフロアのいちばん奥に、そのブライダルサロンはあった。ガラス扉をスーツ姿の女性スタッフさんが中から開き、笑顔で私たちを招き入れてくれた。

「天城様、高尾様、お待ちしておりました」

 案内されたのは、色調の異なる何種類かの白と上品なシルバーで統一された個室だった。ゆったりとした白い革張りのソファに天城さんと並んで座ると、ガラス製のローテーブルの向かいでさきほどのスタッフさんが丁寧に頭を下げてくれる。

「このたびはご婚約おめでとうございます」
「ありがとうございます」
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