クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
 首を捻れば、柊梧さんが私をぎゅうぎゅうに抱きしめて眠っていたことに気が付いた。かろうじて寝返りは打てる。ころんと彼の方を向いて、眠る柊梧さんの端整なかんばせを見つめた。男性らしいくっきりとした喉仏が目の前にある。なんとなく触ってみると、微かに身じろぎして柊梧さんがうっすらと目を開いた。
 お、起こしてしまった……!

「ご、ごめんなさい。お疲れなのに、起こしちゃ……」

 言い終わる前に、前髪をかき上げられて額にキスを落とされた。目を丸くする私の頭にほおずりをして、もう一度抱きしめなおして柊梧さんは言う。

「おはよう、海雪」

 蕩けるような、甘い甘い声音だった。きりっとしている目元が和らげられ、頬も緩んでいる。
 幸せそうな、そんな笑顔だった。
 心臓がドキっと大きく跳ねる。

「お、おはようございます」

 答えながら、頬が熱くなるのを感じる。そんな私に、彼はさらにキスを落としてくる。何度も目を瞬かせた。
 昨日は、久しぶりに会えた嬉しさもあってちょっとちゃんと考えられなかったけれど……なんていうか、その。

「どうした? 海雪」

 お砂糖に蜂蜜をかけてさらに煮詰めたくらいに甘い声だ。さらり、さらり、と私の髪を梳いている。

 ……本当に、あの柊梧さんなの? 柊梧さんだよね? 海でお仕事中になにかあって、別人と入れ替わって……なんて荒唐無稽なことまで浮かんできていた。

 朝食だって私の希望を聞いてから作ってくれて――もっともこれは、柊梧さんがお料理が趣味だから、というのもあるだろうけれど。どうやら職場に差し入れを作って持って行っているようだったし、本当に人に料理を作るのが好きなんだろう。

「おいしそう……!」

 テーブルに乗せられたフレンチトーストに、思わずそんな言葉が出た。きっとものすごく目を輝かせてしまっているだろう。柊梧さんはすこし得意げに唇を上げた。

「昨日まで乗っていた船の調理員から教わった」
「船のコックさん、ということですか?」

 そうだ、と柊梧さんはやけに真剣に頷く。

「海自メシは旨いんだ」

 頷きつつ、ちょっと食べてみたいなと思う。




「海雪。冷えないか? 上に羽織る?」
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