クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
 彼が帰宅した翌日が、ちょうど産婦人科での検診の日だった。朝食後一緒にマンションを出て、十秒くらいで柊梧さんは私の顔を覗き込んでそう言ったのだ。手をしっかりと、指と指を絡める恋人繋ぎをして。

 植え込みの色づいた銀杏が、晩秋の陽射しを透かす。その光が、柊梧さんのまっすぐな目をきらきらと彩った。

 私は眩しいものを見た気分になって目を細めた。大切にされているのが、とてもとても嬉しい。もともと、優しくしてもらってはいたのだけれど……そっけなさが掻き消え、くすぐったいほどに甘い。

「寒くないですよ」
「そうか? やっぱり車でいかないか」
「ごろごろしてばかりなので……少し歩きたいなって」

 そう答えると、柊梧さんは「わかった」と頬を緩めた。

「産院はなにを基準に選んだんだ? いい病院だとは思うけれど」
「ええと、通いやすさと、あと、ネットのクチコミがよくて」

 相談できる相手もいなかったから、必死で調べたのだ。柊梧さんは微かに眉を下げた。

「すまなかった、初めてのことなのにひとりで色々と決めさせて」
「いえ、そんな」
「しばらくは陸にいると思うから、なんでも頼ってほしい」

 穏やかに言う彼に、ちょっとだけ驚きが隠せない。

 二ヶ月の出航前まで、彼から返ってくる言葉なんて、私に全く興味がないとまでは言わないけれど、それでもほとんどがそっけない「そうか」だけだったのに。

 私はこっそりとお腹を撫でた。
 すごいなあ、赤ちゃん効果。

 産院の診察でも、彼はとても真剣だった。エコーの見方なんかもおそらく知っているだろうに、先生の説明をしっかりと唇を引き結んで頷いて聞く。

「あ」

 エコーを見ながら思わずつぶやいた。白黒のエコー映像で、赤ちゃんがもぞもぞと動いているのが見えたからだ。じっと凝視していると、柊梧さんがぎゅっと私の手を握ってくれた。彼もまた、目をきらきらさせてエコーを見つめている。

「あらあ、赤ちゃん元気いっぱい」

 担当の女性ドクターが優しい声で言った。

「ちょっと測らせてねえ。ええと、身長は三センチ……」
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