クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
「当たり前だろう? 君は俺の唯一なんだから……君を幸せにするのが俺の役割だ」

 そう言って微笑む柊梧さんに、私はぼろぼろとまた泣き出しながらなんども頷く。

「わ、かりました……そうします。そうさせてください」

 ひとつ息を吸って、しっかりと彼の目を見る。

「私にもあなたを、幸せにさせてください」

 柊梧さんは小さく目を見張ったあと、そっと私の頭を撫でる。何回も何回も、それこそ泣きつかれて私が眠ってしまうまで。

 眠りながら、私はようやく気がつく。
 彼が優しかったのは、きっと、私に同情していたのだ。

 ご実家と折り合いの悪かった彼だからこそ、雄也さんから聞いた私の扱いに思うところがあったのだろう。それで結婚だって引き受けてくれたのだ。

 妊娠したからだけでなく、心から同情してくれているから……彼はこんなに私を慈しんでくれるのだろう。

 だってそれ以外に考えつかない。
 他人の家庭を壊して生まれた厚顔無恥な私が柊梧さんに家族として愛されて慈しまれる理由が、他にも思いつかないのだ。

 それでも。
 それでも私は、前を向こうと決めた。私は柊梧さんの唯一なのだ。一生家族として大切にしてくれると言っていた。

 それならば、彼の言うとおり幸せになろう。彼のために生きよう。それが彼のために私のできる唯一だと思うから。



 柊梧さんはあっという間に新居を手配してくれた。横須賀市内の一等地にある瀟洒な洋館だ。

 なんでも、基本的には米軍の高級将校向けに貸し出している家らしい。白い、少しレトロな雰囲気のする二階建ての家だった。芝生の敷かれた庭も広々としていて、私は自然とこの庭で遊ぶ小さな子供を夢想する。もっとも、子どもが走り回れるようになる前に、彼は転勤があるのだけれど。

 隣近所もそんなタイプのお宅が多く、自然とセキュリティもしっかりとしていた。お隣の米軍将校の五十代半ばほどの奥さまはとても面倒見がよく、まだそこまで目立たない私のお腹のふくらみを目ざとく見つけて『ワオ、赤ちゃんの面倒なら任せて』とさっそく張り切ってくれていた。少し雰囲気が大井さんに似ていてホッとする。

「ここなら大丈夫だ。万が一あいつらが出たら米軍の憲兵に不審者として突き出してやる」

 憲兵とは米軍の警察のような組織らしい。険しい目つきで言う柊梧さんの発言は、はたして冗談なのか本気なのか判別がつかなかった。
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