クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
 新しい家には、どんどん赤ちゃんのものが増えていく。それと同じように、私のお腹も大きくなっていく。
 ぽこぽこ、うにょうにょとお腹の中で動き回る赤ちゃんに、日ごとに愛情が増していく。かわいくてしかたない。

 柊梧さんも同様なようで、いってきますもただいまも、私を抱きしめたあと必ずお腹を撫でた。

 お腹の赤ちゃんは、男の子らしい。

 私はベビーベッドが主役のように置かれたリビングで、広い庭に咲き誇るミモザを眺めた。ふわふわの黄色い花は、春の訪れを優しく告げてくれている。春になったばかりの陽射しが、ぽかぽかと大きな窓からリビングを暖めてくれていた。

 ソファでのんびりと赤ちゃんのスタイを手縫いしていると、なんとも言えない気分になってくる。穏やかで、少しだけ眠い。まどろみそうになっている私を、優しく低い声が呼ぶ。

「海雪、針を持ったまま寝ると危ないぞ」

 そう言って彼は、柊梧さんは私の横に座り、そっと手から針をとる。その指先の温かさが、慈しみが、温かくてたまらない。

「ありがとうございます」

 お礼を言うと、頭を撫でられた。

「少し寝るか? ……これ、いいな」

 柊梧さんはスタイを手に取りまじまじと見つめ目を細める。

「アロハシャツをイメージしたんです」

 スタイの色は、海のような紺碧。そこにハワイをイメージさせる花々を赤で刺繍していた。
 柊梧さんは嬉しげに頬を綻ばせ、大きくなりつつあるお腹を撫でた。

「よかったなあ、かわいいちゃん」

 まだ名前が決まっていない赤ちゃんのことを、柊梧さんは「かわいいちゃん」と呼ぶ。その呼びかたがどうにもくすぐったくて、私はいつも小さく笑ってしまうのだ。

「またハワイに行こう。今度は三人で」

 優しくお腹を撫でながら言われ、私は胸がきゅうっと切なくなってしまう。喜びとうれしさが入り混じって、それがどうしてか切なさに似てしまうのだ。

「海雪、愛してる」

 そう言って彼は私のこめかみにキスを落とす。甘えて擦り寄れば、キスが唇に降ってきた。

 引き寄せられ、彼の膝の上に乗り上げるようにしてキスが深くなる。擦り合わされる舌がじん……と痺れたような気分になって、そこで私はハッとして目を瞬いた。

「ん、……ぁ、柊梧さん。あの」
「なんだ?」

 ぺろっと私の唇を舐める仕草に胸を高ならせつつ、私はソファの隅っこに置いてあった紙袋に手を伸ばす。
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