クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
「けれど、私は、高尾の家のみなさまに、贖罪するために生きてきました。さっき義母が言っていましたが、私は……父の婚外子です」

 告げる声は震えたけれど、必死で説明する。

「母がやってしまったことは最低なことです。他人の家庭を壊すような、そんな……ことを……」

 だから政略結婚をしたのだ。
 そのために育てられたから。

 ただ、その政略結婚は、私にとってとても甘く、幸せなものだったけれど。

「海雪」

 柊梧さんはそっと私をたしなめるように名前を呼んだ。

「最初から、知っていた」
「え」
「高尾から聞いていた。でもそんなの関係ない。君が償う必要のない罪だ」
「そんな……そんな、ことは」

 そんなはずは。
 そのために生きてきた私は。

 力を抜いて柊梧さんにもたれかかる私に彼は言い聞かせるように、優しい口調で続ける。

「最初から、あの家は壊れていた。あの夫婦は愛し合ったことなど一度もないし、君の義母は常に自分の欲望のために生きてる。妹は母親そっくりで……高尾がどうしてああまともに育ったのか、わかるか?」

 ゆるゆると首を振る私に、柊梧さんは微笑む。

「君だよ」
「……私?」
「まっすぐで、どこまでも優しい君を見てきたから。だから高尾は、あいつだけはまともな人間になれたんだ」
「そんな。私なんて」
「君はそれくらいすごい人なんだ。卑下しないでくれ」
「柊梧さん……」

 彼の名前を呼びながら、私は半泣きになる。

「でも、でも……私から高尾の家のためになる、という目的がなくなると、私はどうやって生きていけばいいのかわかりません」

 目的というよりは、根幹だ。
 そのために生きてきた。贖うために育てられた。そのために、そのためだけに……。
 なのにそれをしなくていいだなんて、これからどうやって生きていけばいいの。

「なら」

 柊梧さんはかすかに息を呑み、それから続けた。

「それなら、俺のために生きてくれないか」
「……柊梧さん、の?」

 目を瞬く。零れた涙は、彼の親指が拭ってくれる。

「そうだ。俺の。……かわりに、俺は君のために生きるから」

 驚き、開きかけた唇を彼の指が押す。

「夫婦なんだから、いいだろう」
「夫婦……」

 指が離された唇で、そうつぶやく。
 柊梧さんは私の頬をくすぐった。

「もう実は、とっくに俺はそうやっていた」
「……、えっ」
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