クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
 さすがにふたり産んでいるだけあって、そのあたりは分かっていたらしい。ただ、どうして医師である俺を騙せると思ったのかは理解に苦しむ。

「お、お母さん? どういうこと、海雪は絶対に不倫してる、証拠もあるって言ったのお母さんじゃん。そんなに好きなら、あたしを柊梧さんのお嫁さんにしてあげるって!」
「あ、あるわよ。大井の息子と、海雪は仲がいいもの。絶対にふしだらな関係に決まってる……この写真のときに雄也がいたっていう証拠だってないじゃない」
「いい加減にしてくれ」

 リビングの扉から聞こえたのは、高尾の声だった。

「本当に……いい加減に……」
「お、お兄ちゃん」

 愛菜が慌てたように声を上げる。

「違うの! だって海雪が柊梧さんを騙して、他の男の子どもを産もうとしているから」
「そんなこと、海雪がするはずがないだろ……? どうしてそんなこともわからないんだ」

 そう言って目線を逸らし、続ける。

「自分たちがすぐに男と寝るからと、他人までそんなことをしているなんて思い込むのはやめてくれ」
「ゆ、雄也!」

 血相を変えたのは高尾夫人だった。

「あなた、一体何を」
「僕がなにも知らないとでも思っているの? 母さんが夜な夜な出歩いてなにをしているのか」

 ぐっと押し黙り、視線を泳がせる。
 それを視界におさめつつ、俺は口を開いた。

「俺の親族にでも頼まれたのか。俺を天城会に引き戻せば借金を肩代わりしてやるとでも?」

 びくりと肩を揺らす高尾夫人を見て、どうやら当たりかと肩をすくめた。

 愛菜と俺を結婚させることにより、俺を天城会に引き戻す。

 画策したのが長兄か次兄か知らないが、後継争いが激化していると聞くから、どちらかが俺を自分の陣営に引き摺り込むために画策したのだろう。

 鼻で笑った。

「二度と戻ってやるものか、あんな拝金主義の巣窟に」

 真っ赤な唇を噛む高尾夫人を見て、愛菜が愕然と目を見開く。

「ど、どういうこと? 借金だなんて……お母さん。お母さん、言ったじゃない。柊梧さんに本当にふさわしいのはあなたよって」
「君は知らなかったのか? 君の母親は高尾病院の金を横領していたばかりか、それでも足りずにホストクラブに借金がある」
「う、嘘」

 愛菜がよろけ、ソファに座る。俺はムッとして眉を上げた。海雪の気に入っている座り心地のいいソファだ。

「勝手に座るな」
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