クールな海上自衛官は想い続けた政略妻へ激愛を放つ
俺の言葉に、愛菜は目を見開き傷ついたような顔をする。
ずっと傷ついていたのは海雪のほうなのに。
一方で海雪はおろおろと「愛菜さん」と呟いた。心配しているのか、と思わず眉を上げる。
どうしてそんなに、寛容でいられるのだろう。
「母さん、愛菜、帰ろう。……信じられない、土足で他人の家に上がりこむなんて」
愛菜を無理やり立ち上がらせ、高尾が声を震わせた。
「本当に、情けない……行こう、ふたりとも」
「い、いやよ」
高尾夫人は取り乱した様子で首を振る。
「ね、ねえ。柊梧さんもよく考えて。愛菜と結婚をして天城会に戻れば、いまよりいい生活ができるわ。そ、そうよ。高尾病院の本院の、院長にだっていずれはっ」
「興味がない。特段出世欲もない。あったら医官なんかしていない」
「そんな」
心底理解できない、という顔をした高尾夫人の横で、高尾に腕を掴まれ半泣きで俺を見つめている愛菜と視線がかち合う。
「す、好き」
愛菜が震える声で言う。腕の中で、小さく海雪が肩を揺らす。
「好きなんです、柊梧さん……なんでも頑張るから、お嫁さんにして」
「何度も言っている。俺の妻は永遠に海雪ひとりだと」
眉を寄せ目を眇めそう言い放ってみれば、愛菜の顔がみるみるうちに絶望に染まった。
いままで一度も思い通りにならなかったことがない世間知らずのお嬢様は、きっとこれから味わったことのない苦労を重ねるだろう。
おそらく借金は高尾夫人個人ではどうしようもない額まで膨らんでいるのだろうし、夫である高尾院長は彼女たちを助ける気は毛頭ないのだろう。
この親子のこれからにこれっぽっちも興味がない俺の腕の中で、海雪が小さく小さく、安心したように息を吐いた。緊張していたのか。
ここにいてくれと、そんな思いを込めて頭にキスを落とす。
と、窓の向こうからサイレンが聞こえてきた。パトカーの走行音だ。
同時に隣家の米軍将校夫人が窓から飛び込んでくる。
『警察を呼んだわ! ミユキ、大丈夫?』
『フォックス夫人』
海雪が目を丸くする。その海雪を庇うようにフォックス夫人は俺たちの前に立つ。いつのまにこんなにかわいがられるようになっていたんだろう。
続いて飛び込んできたのは制服姿の警察官だった。庭でも無線で連絡をとっているのが見える。
ずっと傷ついていたのは海雪のほうなのに。
一方で海雪はおろおろと「愛菜さん」と呟いた。心配しているのか、と思わず眉を上げる。
どうしてそんなに、寛容でいられるのだろう。
「母さん、愛菜、帰ろう。……信じられない、土足で他人の家に上がりこむなんて」
愛菜を無理やり立ち上がらせ、高尾が声を震わせた。
「本当に、情けない……行こう、ふたりとも」
「い、いやよ」
高尾夫人は取り乱した様子で首を振る。
「ね、ねえ。柊梧さんもよく考えて。愛菜と結婚をして天城会に戻れば、いまよりいい生活ができるわ。そ、そうよ。高尾病院の本院の、院長にだっていずれはっ」
「興味がない。特段出世欲もない。あったら医官なんかしていない」
「そんな」
心底理解できない、という顔をした高尾夫人の横で、高尾に腕を掴まれ半泣きで俺を見つめている愛菜と視線がかち合う。
「す、好き」
愛菜が震える声で言う。腕の中で、小さく海雪が肩を揺らす。
「好きなんです、柊梧さん……なんでも頑張るから、お嫁さんにして」
「何度も言っている。俺の妻は永遠に海雪ひとりだと」
眉を寄せ目を眇めそう言い放ってみれば、愛菜の顔がみるみるうちに絶望に染まった。
いままで一度も思い通りにならなかったことがない世間知らずのお嬢様は、きっとこれから味わったことのない苦労を重ねるだろう。
おそらく借金は高尾夫人個人ではどうしようもない額まで膨らんでいるのだろうし、夫である高尾院長は彼女たちを助ける気は毛頭ないのだろう。
この親子のこれからにこれっぽっちも興味がない俺の腕の中で、海雪が小さく小さく、安心したように息を吐いた。緊張していたのか。
ここにいてくれと、そんな思いを込めて頭にキスを落とす。
と、窓の向こうからサイレンが聞こえてきた。パトカーの走行音だ。
同時に隣家の米軍将校夫人が窓から飛び込んでくる。
『警察を呼んだわ! ミユキ、大丈夫?』
『フォックス夫人』
海雪が目を丸くする。その海雪を庇うようにフォックス夫人は俺たちの前に立つ。いつのまにこんなにかわいがられるようになっていたんだろう。
続いて飛び込んできたのは制服姿の警察官だった。庭でも無線で連絡をとっているのが見える。