《旧版》涙色の夢路(ゆめ)【壱】

第壱章 ~Destined encounter~ / プロローグ

 彼と出逢ったのは――源平、戦国、幕末の歴史人物が(つど)う異世界だった。

 少し寒くなり始めた東京の街に、柔らかな陽の光が降り注ぐ。
 そんな中、19歳のあたし――()()(わら)(もえ)()は、バス停に続くアスファルトを歩いていた。

「……()ェ天気やな」
 そう言ったのは、隣を歩く青年。あたしの恋人だ。

 七三分けの瑠璃(るり)色の髪に雪のように白い肌、(しゃく)(どう)色の大きな目を縁取る長い睫毛。水色のパーカーと黒のスリムパンツが、華奢な体を包んでいる。

「うん、最近よく晴れてるよね」
 穏やかな眼差しで空を見上げている彼に、あたしは答えた。

 女性も裸足で逃げ出してしまいそうな美人だけれど、その小さな喉仏や骨が浮き出た手の甲に、彼が男性であるということを再認識させられる。

 ……こうやって微笑むことも、以前はなかったのにな――特に、()()()からは。
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