青春は、数学に染まる。

考査期間に入って2週間が経過した。
全てのテストが無事に終了し、授業で答案が返却される。



数学漬けだった私だけど、他の科目にもしっかりと力を入れて取り組んだ。その結果、他の科目は無事に維持していた。

これまで通りどれも90点以上。





問題は今から。
次の時間は数学。そして、最後のテスト返却科目。


 …何故か数学がいつも最後の返却だよね。嫌がらせか!



そんなこと思いながら、赤点だけは回避したい…と手を握って願う。
補習無しになるかな、でも補習無かったら同好会はどうなるんだろう?

色んな考えが頭の中でぐるぐるする。


「真帆、次はお楽しみだね!」
「ドキドキする」
「今のところ全部90点以上でしょ? 凄いよね、本当に数学だけがダメなんだね!!!」
「こら、ダメとか言わない! 今回はしっかり勉強したから点数伸びているはずよ」
「目標は何点?」
「うーん、31点?」
「赤点回避ライン!!!!!!!!」


目標は低く。理想も低く!
赤点さえ回避できれば、それ以上は何も望まないよ。


「はい、着席して下さい」


そう言いながら早川先生が入ってきて、私と目を合わせた。
そして口角を少しだけ上げて、教室全体へと目を向ける。

「………」


不思議なことに、胸がドキッとした。………何で?


「今日はテストの返却と解説を行います」

早川先生は1人ずつ名前を呼んでいく。
みんな点数が良いのかな。喜んでいる人が多い。

俺62点かぁ~とふと聞こえた声。62点あれば上等だと思いますよ。私からすれば。

「藤原さん」
「はい」

前に出て早川先生からテストを受け取る。
早川先生は私の目をじっと見ながらまた口角を上げた。

「放課後、お待ちしております」

低く小さな声で(ささや)く。
(さわ)がしい教室の中でも、その声はしっかり私に届いた。




…ん?
というか、今のって放課後の呼び出し?



席に戻る途中、私は受け取った答案をゆっくりと開いた。


「…え」

飛び込んできた数字に脳がフリーズする。


7点。


「ちょ、…えぇ!?」

衝撃的過ぎて体から力が抜ける。床が近付いてくる感覚があった。

「え、藤原さん?」
「ちょっと! 真帆!?」


床に倒れた私は早川先生と有紗の声が遠くに聞こえたのを最後に、意識は遠退(とおの)いていった。







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