気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
動揺して思わず出て来てしまった言葉だが、言った傍から後悔した。
(さっきIT関連の仕事だと言ってたのに!)
話を聞いていなかったと気を悪くされたかもしれないと心配だったが、彼の表情はむしろ楽しそうに見える。
「ワタライワークスという会社を経営している。仕事内容はビジネスアプリケーションの提供とコンサルティング業務だ。最近では甘玉堂の流通システムを手掛けたんだ」
「甘玉堂?」
咲良は驚愕して目を見開いた。
「ああ、駒井さんは食品業界だと言ってたから、聞いたことがあるかもしれないな」
「……はい。老舗の和菓子店で、最近業績を上げていると聞いてます」
聞いたことがあるどころではない。甘玉堂は金洞商会最大のライバル企業だ。
低迷している金洞商会とは対照的に、驚異的なスピードで売上を伸ばしたことで、金洞副社長が強く意識している。
(まさか渡会さんの会社の力によるものだったなんて)
しかも会社の代表、CEOだ。
(だからさっき名前を聞いたとき、聞き覚えがある気がしたんだ……)
彼の男らしさにときめき早鐘を打っていた心臓が、今は不安と緊張で脈打っている。
金洞副社長は好調な甘玉堂に嫉妬し敵対心を持っている。
業績改善において重要な役割を果たした渡会ワークスに対しても、同じようなものなはず。
それなのに自分の秘書である咲良が、仲良く飲んでたと知ったら、間違いなく激怒する。
考えるだけで怖ろしい。
「どうした?」
咲良の様子の変化に気付いたのか、颯斗が心配そうに見つめてくる。
「あ、何でもないです。少しぼんやりしてしまって」
「気分は悪くない?」
「はい、大丈夫です」
そう答えると、颯斗が安堵の表情になる。本当に心配していたように感じた。
(優しい人だな)
今日会ったばかりの咲良にも気を配ってくれる。
それに彼と過ごすこのひと時が心地よい。ときめきいて緊張しているのに、会話が楽しく、微笑み合うと心が満たされた気分になる。
だから、関わらない方がいい立場の人だと気付いた今でも、先に席を立つ気になれない。
(颯斗さんともう少し一緒に居たい)
そんな想いに抗えない。だから自分から話題を繋いでしまう。
「コンサルはどんなことをされるんですか?」
「販売や経理のアプリケーションを導入する際は、クライアントの経営状況を確認する。その過程で……」
(さっきIT関連の仕事だと言ってたのに!)
話を聞いていなかったと気を悪くされたかもしれないと心配だったが、彼の表情はむしろ楽しそうに見える。
「ワタライワークスという会社を経営している。仕事内容はビジネスアプリケーションの提供とコンサルティング業務だ。最近では甘玉堂の流通システムを手掛けたんだ」
「甘玉堂?」
咲良は驚愕して目を見開いた。
「ああ、駒井さんは食品業界だと言ってたから、聞いたことがあるかもしれないな」
「……はい。老舗の和菓子店で、最近業績を上げていると聞いてます」
聞いたことがあるどころではない。甘玉堂は金洞商会最大のライバル企業だ。
低迷している金洞商会とは対照的に、驚異的なスピードで売上を伸ばしたことで、金洞副社長が強く意識している。
(まさか渡会さんの会社の力によるものだったなんて)
しかも会社の代表、CEOだ。
(だからさっき名前を聞いたとき、聞き覚えがある気がしたんだ……)
彼の男らしさにときめき早鐘を打っていた心臓が、今は不安と緊張で脈打っている。
金洞副社長は好調な甘玉堂に嫉妬し敵対心を持っている。
業績改善において重要な役割を果たした渡会ワークスに対しても、同じようなものなはず。
それなのに自分の秘書である咲良が、仲良く飲んでたと知ったら、間違いなく激怒する。
考えるだけで怖ろしい。
「どうした?」
咲良の様子の変化に気付いたのか、颯斗が心配そうに見つめてくる。
「あ、何でもないです。少しぼんやりしてしまって」
「気分は悪くない?」
「はい、大丈夫です」
そう答えると、颯斗が安堵の表情になる。本当に心配していたように感じた。
(優しい人だな)
今日会ったばかりの咲良にも気を配ってくれる。
それに彼と過ごすこのひと時が心地よい。ときめきいて緊張しているのに、会話が楽しく、微笑み合うと心が満たされた気分になる。
だから、関わらない方がいい立場の人だと気付いた今でも、先に席を立つ気になれない。
(颯斗さんともう少し一緒に居たい)
そんな想いに抗えない。だから自分から話題を繋いでしまう。
「コンサルはどんなことをされるんですか?」
「販売や経理のアプリケーションを導入する際は、クライアントの経営状況を確認する。その過程で……」