気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
「いえ。持って来ていません」
初日なので様子を見るつもりで用意しなかった。
「それなら近くのカフェに行きませんか? この辺は結構おいしいお店があるので案内します」
「はい、ありがとうございます」
「姉の話はすごく時間がかかるので、そのとき話しますね」
「……はい」
一段低い声で囁かれ、咲良はごくりと息を呑んだ。
羽菜は瀬奈と違って人当たりが良いし咲良に対して好意的だ。颯斗が雇用しているくらいだから、問題がない人物なのだろうけれど、何か含みがありそうな気がして不安が過った。
「では仕事をはじめましょうか。午前中はオフィスの詳しい説明と、使用するシステムの説明とか、組織についての確認あたりがいいですね」
「お願いします」
(今は余計なことを考えないで、仕事に集中しなくちゃ)
「まずは席に案内しますね。私たち管理部門のスタッフだけはフロアが違うんで、移動しましょう」
「はい」
羽菜の後に着いて挨拶をした広いフロアを一旦出て、半分くらいの大きさのフロアに入る。
「ここに私たちのフロアです。うちは基本的にはフリーアドレス制でその日の仕事状況で席を選べるんですけど、私たち管理スタッフだけはこのフロアで仕事をするルールです」
「それはセキュリティの問題ですか?」
「そうです。咲良さんの席はここになります。他部署との打合せのときなどは、機密資料を持ち出さなければ向こうのフロアでも大丈夫です」
「分かりました」
スタッフ部門の席は、メインフロアとは対照的に平凡な横並びの配置だった。デスク自体は同じ木目調のものだ。
「役員四名の席は向こうに固まっています」
羽菜が示す方に目を向けると、ガラス張りの仕切りがあった。透けて見える先には颯斗と数人の男性が打合せをしている。
「役員室なのに随分オープンなんですね」
「そうですね。でも移転前のオフィスは役員もみんなと同じフロアだったのでこれでも大分よくなりましたよ」
「本当に素敵なオフィスですよね」
「そうですね。少し残念なのがこのフロアは眺めがイマイチなんですよね」
羽菜が残念そうに零す。確かに窓の向こうに見えるのは、同ビルの西館の壁ばかりだ。
「メインフロアの方は見晴らしが良かったですよね」
「そうなんです。でも生産性を高める為に、眺めがよいところは社員優先なんですって」
(颯斗さんらしいかも)
初日なので様子を見るつもりで用意しなかった。
「それなら近くのカフェに行きませんか? この辺は結構おいしいお店があるので案内します」
「はい、ありがとうございます」
「姉の話はすごく時間がかかるので、そのとき話しますね」
「……はい」
一段低い声で囁かれ、咲良はごくりと息を呑んだ。
羽菜は瀬奈と違って人当たりが良いし咲良に対して好意的だ。颯斗が雇用しているくらいだから、問題がない人物なのだろうけれど、何か含みがありそうな気がして不安が過った。
「では仕事をはじめましょうか。午前中はオフィスの詳しい説明と、使用するシステムの説明とか、組織についての確認あたりがいいですね」
「お願いします」
(今は余計なことを考えないで、仕事に集中しなくちゃ)
「まずは席に案内しますね。私たち管理部門のスタッフだけはフロアが違うんで、移動しましょう」
「はい」
羽菜の後に着いて挨拶をした広いフロアを一旦出て、半分くらいの大きさのフロアに入る。
「ここに私たちのフロアです。うちは基本的にはフリーアドレス制でその日の仕事状況で席を選べるんですけど、私たち管理スタッフだけはこのフロアで仕事をするルールです」
「それはセキュリティの問題ですか?」
「そうです。咲良さんの席はここになります。他部署との打合せのときなどは、機密資料を持ち出さなければ向こうのフロアでも大丈夫です」
「分かりました」
スタッフ部門の席は、メインフロアとは対照的に平凡な横並びの配置だった。デスク自体は同じ木目調のものだ。
「役員四名の席は向こうに固まっています」
羽菜が示す方に目を向けると、ガラス張りの仕切りがあった。透けて見える先には颯斗と数人の男性が打合せをしている。
「役員室なのに随分オープンなんですね」
「そうですね。でも移転前のオフィスは役員もみんなと同じフロアだったのでこれでも大分よくなりましたよ」
「本当に素敵なオフィスですよね」
「そうですね。少し残念なのがこのフロアは眺めがイマイチなんですよね」
羽菜が残念そうに零す。確かに窓の向こうに見えるのは、同ビルの西館の壁ばかりだ。
「メインフロアの方は見晴らしが良かったですよね」
「そうなんです。でも生産性を高める為に、眺めがよいところは社員優先なんですって」
(颯斗さんらしいかも)