気高き敏腕CEOは薄幸秘書を滾る熱情で愛妻にする
もちろんそんなはずがない。
彼は契約妻の自分を尊重して大切にしてくれているだけだと分かっている。
それなのに、ふとした拍子に彼への想いが蘇りそうになる。
けれどその気持ちを打ち消した。深く考えたら辛くなると分かっているのだから。
咲良は気を取り直して口を開く。
「颯斗さん、今日は素敵な就職祝いをありがとうございます」
「楽しんでくれているみたいでよかったよ」
「はい。最高の記念日になりました。明日から一層頑張って働きますね」
「期待している。でもあまり無理はするなよ?」
釘を差す颯斗に、咲良は素直に頷いた。
「ワタライワークスはよい会社ですね。颯斗さんが言っていたように風通しの良い会社で社員の人たちは役員相手でも物怖じしないで意見を言ってましたね。縦と横のコミュニケーションがよく取れていて、みんなやる気に溢れて、愛社精神を感じました」
「そうだな。みんなもっと会社を成長させようと力を発揮している。役員との溝が少ないのは少人数からスタートして成長して来たからだろうな。企業したての頃は役員室なんてなくて机を並べて仕事をしていたんだ」
颯斗は懐かしく感じたのか、楽しそうに目を細めた。
「転居前のオフィスはすごく狭かったそうですね。羽菜さんに聞きました」
「ああ。そう言えば、咲良のフォローは羽菜だったな」
「……羽菜って呼んでるんですか?」
「昔からの付き合いだからな……どうかしたのか?」
咲良が黙ってしまったからか、颯斗が怪訝そうな表情になる。
「い、いえ……何でもないです」
笑って誤魔化したが、咲良の胸中はモヤモヤした不快感に満たされていた。
この不快感は嫉妬からくるものだ。颯斗が羽菜を呼び捨てたことで、ふたりの親密度を感じ動揺している。
(でも私が嫉妬する権利なんてない)
契約妻の立場で、夫の交友関係を気にして文句を言うなんて許されないのだから。
そもそも名前を呼び捨てたくらいで、過敏に反応し過ぎている。
(気にしないようにしなくちゃ。嫉妬も厳禁。そうしなければ契約結婚なんて続けられないんだから)
内心溜息を吐きながら、ワイングラスを手に取り煽る。
濃厚なアルコールが喉を通るのを感じたとき、颯斗が何か言いたそうな顔をしていることに気がついた。
「颯斗さん?」
「……咲良、何か悩んでいるんだろう? 話してくれないか?」
彼は契約妻の自分を尊重して大切にしてくれているだけだと分かっている。
それなのに、ふとした拍子に彼への想いが蘇りそうになる。
けれどその気持ちを打ち消した。深く考えたら辛くなると分かっているのだから。
咲良は気を取り直して口を開く。
「颯斗さん、今日は素敵な就職祝いをありがとうございます」
「楽しんでくれているみたいでよかったよ」
「はい。最高の記念日になりました。明日から一層頑張って働きますね」
「期待している。でもあまり無理はするなよ?」
釘を差す颯斗に、咲良は素直に頷いた。
「ワタライワークスはよい会社ですね。颯斗さんが言っていたように風通しの良い会社で社員の人たちは役員相手でも物怖じしないで意見を言ってましたね。縦と横のコミュニケーションがよく取れていて、みんなやる気に溢れて、愛社精神を感じました」
「そうだな。みんなもっと会社を成長させようと力を発揮している。役員との溝が少ないのは少人数からスタートして成長して来たからだろうな。企業したての頃は役員室なんてなくて机を並べて仕事をしていたんだ」
颯斗は懐かしく感じたのか、楽しそうに目を細めた。
「転居前のオフィスはすごく狭かったそうですね。羽菜さんに聞きました」
「ああ。そう言えば、咲良のフォローは羽菜だったな」
「……羽菜って呼んでるんですか?」
「昔からの付き合いだからな……どうかしたのか?」
咲良が黙ってしまったからか、颯斗が怪訝そうな表情になる。
「い、いえ……何でもないです」
笑って誤魔化したが、咲良の胸中はモヤモヤした不快感に満たされていた。
この不快感は嫉妬からくるものだ。颯斗が羽菜を呼び捨てたことで、ふたりの親密度を感じ動揺している。
(でも私が嫉妬する権利なんてない)
契約妻の立場で、夫の交友関係を気にして文句を言うなんて許されないのだから。
そもそも名前を呼び捨てたくらいで、過敏に反応し過ぎている。
(気にしないようにしなくちゃ。嫉妬も厳禁。そうしなければ契約結婚なんて続けられないんだから)
内心溜息を吐きながら、ワイングラスを手に取り煽る。
濃厚なアルコールが喉を通るのを感じたとき、颯斗が何か言いたそうな顔をしていることに気がついた。
「颯斗さん?」
「……咲良、何か悩んでいるんだろう? 話してくれないか?」