悪役令嬢ですが攻略対象者達からヒロインに指名されました

最終話

「憂鬱だわーーーー」

月日はすぎて13歳になる年、訪れた春の息吹は暖かいのに、ティアレーゼの心は身震いする程隙間風が吹き込んでいる
公爵邸ーーーー王都邸の庭にあるティアレーゼお気に入りのガゼボは花が香り、新たなる一歩を踏み出す祝福をしている様に思えるが、肝心のガゼボの主は不安を顔に出したままだ。

満開の花々に囲まれて気が紛れると思いきや、さっきから溜め息を繰り返してばかりいる。

「入学式前なんてそんなものですよ」

2学年先輩になるオスカーが訳知り顔で言うが、ティアレーゼにしてみれば「違う、そうじゃない」なのだ。

ゲームのストーリーが、どう始まるのか分からない以上、悪役令嬢は退場したいのだ。

大体、伯爵家を継ぐ事になったオスカーが何故今もティアレーゼの専属執事をしているのか。

学生故に学校があるが、終わると公爵邸に戻り、こうしてティアレーゼの執事なんてやってる。

本人曰く、現伯爵の許可はとってあるらしく、「私にもメリットはありますから」とか何とか。
まぁ確かにグランツ公爵家と繋がっているのはメリットがあるだろう。

「別に執事をしなくても、オスカーはもう一人のお兄様みたいなものじゃない。グランツ公爵家との繋がりは消えないわよ?えなに、そんな顔して」

ティアレーゼの言葉に、うぐぅ、とオスカーにしてみれば「違うそうじゃない」と言いたげな顔だ。

「言われちゃったね、オスカー『おにいさまみたいな』だって。ああ、俺にも紅茶をくれるかい?」

「勿論ですとも、ギルバート様。ええ、ティアレーゼ様の『現役お兄様』ですし」

フフッと笑うと、義兄のギルバートは当然の様にティアレーゼの隣に座る。

「義兄様、お仕事の方はよろしいのですか?」

義兄の仕事は多岐にわたる。
時期公爵として既に辣腕を振るっているし、今年から学園の理事代理も加わった。

理事はティアレーゼの父、現グランツ公爵だが、おっとりとして気の弱い父親は義兄に丸投げした訳だ。
義母は公爵領や事業を切盛りしているし、義兄は言わずもがなで、口さがない者達は後妻親子にグランツ公爵家は乗っ取られただのと姦しい。

父親は好きな絵を描いて過ごして幸せそうだし、義母も好きな事が出来て楽しそうだ。
気の弱い父親は、強い女性に尻に敷かれているのが丁度良いらしく、仲は睦まじいので言いたい奴には言わせておいている。
義兄にしても、遠縁ではあるが立派に公爵家の血筋なのだし、そのうち実力で黙らせるだろう事は想像に難くない。

「ああ、仕事と言っても、ティアレーゼとのお茶をする時間が取れなくなるような、無能になった覚えはないよ」

ティアレーゼの髪をそっと撫でてくれる義兄は氷の溶けきった笑顔をご披露されているが、その蕩ける笑みがピクリと引きつる。

「オスカー、今日は殿下の訪問は無かった筈だが?」

え、なんで殿下が?と疑問に思うも直ぐに理由が知れる。

「大方、明日の入学式に一緒に登校しようとのお誘いをする為かと」

そんな事を聞いたら、口に含んだ紅茶を危うく吹き出すかと思ったわ!
あの王子、未だにティアレーゼに嫌がらせするのを止めないのだから、執念深い。

「ふーん。どうせ、断っても来ただろうけどね。ティアはどうしたい?」

勿論首を横に振りますとも。勢い良く!
ティアレーゼの様子にギルバートも、オスカーも満足げに頷く。

互いに顔を見合わせると深く頷きあってるけど、相変わらず仲が良い。

そのうちにカツカツとガゼボの階段を登り、麗しいオウジサマがティアレーゼの前に座った。

「すまない、邪魔をする。強引で申し訳ないと思ったが、こうでもしないとティアレーゼに会えなくてな」

王子がチラとギルバートを見た気がしたけど、義兄と揃って上位の者を迎える礼をする。
オスカーは急ぎ茶の用意をすると、ティアレーゼの背後に立った。

ティアレーゼが王子とあまり関わりたく無いのを知ってか、ギルバートもオスカーも王子に対して圧をかけているが、その人王子殿下だからね!?

二人の態度に内心でビクビクするティアレーゼだが、更にここで、もう一つの爆弾が現れて、瀕死の重症を負う。

「ティア!明日から学園だろう?俺も行くからな!ギルバートにーーーーってなぜここにいる、オウジサマ」

ティアレーゼはこの状況をどう収めたらと考えるも、やはり溜め息しか出てこなかった。


レオンがガゼボに来た瞬間から始まる言い合い、相変わらずの口喧嘩。
実は仲が良いのかと思うくらい、息がピッタリの合戦は漫才を見ている気にもなる。

ーーーーこれでヒロインの危機には協力して助けちゃうのだから、愛の力は凄いわ。

フッとティアレーゼの思考に悪魔が囁く。
この際だ、前世の記憶の事を話しても良いんじゃないかと、思う。
今までの、そっとフェードアウト作戦は尽く失敗しているし、それならいっその事ぶちまけて上で、悪役令嬢退場しても良いのでは?
頭オカシイと思われても良いや。
と、投げやりなな思考が飛び交う。
学校?うん、どうなってもいいし、なんなら退学上等、公爵家だってギルバートがいれば良いし、出奔したっていい。
その為の冒険者活動だってしてきた。

丁度皆が揃っているのだし。
ティアレーゼは悪役令嬢コースになる前に、ゲームから退場したいのだ。

「あのーーーー聞いて頂きたいのですが」

ティアレーゼは話を始めた。










「「「「それで?」」」」

いや、それでって。皆、驚かないのかしら。

「驚くも何も。ありえないからな。ヒロインと、だったか。俺達が出会って運命の恋にウンタラなるって?それが、ありえない」

やっぱり信じてもらえないのかしらと、思ったが、レオンの言うことには、そういう事ではないらしい。

「俺が好きなのはティアレーゼだからな」

え、レオンの好きな子って、ティアレーゼなんだ。へぇー。ええ!?

「ティアレーゼ様がおかしな子なのは昔からですし。前世の記憶を持っていても不思議ではありませんね••••その乙女ゲームとやらの悪役令嬢がティアレーゼ様だって言われても、実際に私が惹かれているのは貴女ですし」

ーーーーハイィ!?オスカー、今何て?

「ティアは何が心配なんだい?確かに、そのゲームとやらの舞台がこの世界でも、俺の愛するティアレーゼを悪役令嬢に何てさせないけど?」


ーーーー義兄様まで何を!?

「ふむ。ストーリーとやらが始まらずとも構わないのではないかな?ヒロインとやらが、実際に現れても私はなびかんぞ。お前が好きだからな」


ーーーーーーーー真逆の王子。


「いえいえ、ゲームの強制力もあるかも知れないですし?実際会ったら運命感じてしまうかもですし。それに、聞いてましたか?ヒロインが攻略対象者との間に芽生える愛によって聖魔法が目覚めて、魔王の復活を阻止するんですけど!?」

ゲームの中では聖魔法は確か、死ぬ前のティターニア様の渾身の祈りで清き乙女に宿った筈だ。

あれ、そう言えばティターニア様生きてた。

「ああ、そうだった。俺が母上に呼ばれて精霊界に帰っていた訳なんだがーーーーコレだ。ティアに渡せと言われてな」

レオンが淡く虹色に光る球体を差し出すと、スウッとティアレーゼの胸の中に沈んだ。

目を丸くして驚いていると、レオンが本日最大の爆弾を放り投げた。

「それは聖魔法だと仰られてな。お前ならば使いこなせるだろうと授けて下さるそうだ」

「ーーーー••••••••ハイィ!?」

「ああ、では、ティアレーゼ様がそのヒロインとやらで宜しいのでは?」

ーーーーヤダ、オスカーの目がマジです。

「そうだね、ティアが俺と恋に落ちて、その愛で聖魔法が仕える様になれば、魔王の問題問も解決するね」

ーーーーーーーーーー義兄様、フフフって怖いです。

「そうだな。ティアレーゼがその攻略対象者?つまりは私を選んで恋をすれば良い」

ーーーーーーーーーー王子、言ってる意味がわかりません。

「何を言っているんだ。ティアは俺が妻にするんだぞ?お前たちなど呼んでいない」

ーーーーーーーーーーあ、裸を見ちゃったウンタラですかね、ノーカンで良いのですよ?



全員がティアレーゼに手を差し出す。

「「「「誰を選ぶ?」」」」







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読んでいただきありがとうございました(*´꒳`*)


ザザッとダイジェスト版でしたが、こんな感じのお話です。
 


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