恋の病に、堕ちてゆく。
お風呂の曇った鏡でぼんやりと見るより、手鏡を介して洗面所で確認する方がリアルに映り、それを見た途端、痛みも増した気がした。

気のせい、気のせい。


「はぁ、」

お母さんがいたらな。お願いするのに。


傷薬をつけた綿棒を傷口に塗るために手鏡の角度を工夫してみる。うん、よく見える。手が届きにくい背中上部に傷はないことが不幸中の幸いだ。


出来るだけ優しく、そうっと…。

綿棒を持つ手が震える。

というか、なんだか気分が悪くなってきた。


「最悪…」

立ちくらみがして一旦、床にしゃがみ込む。

先生は傷を見てよく平然としていられたな…。お医者さんって凄いな。
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