恋の病に、堕ちてゆく。
勝手に警戒していたけど、恥ずかしい…。
青波は最初から本当に私の手当をしてくれるつもりだったようで。疑う必要はなかったんだな…。

私はまだ、ドキドキしているけど…。

乾燥機に入れた衣類はすっかり乾いていた。


「あ、お礼…」

誘拐犯にお礼を言うのはおかしいかな?でも言っておきたかった。



部屋に戻ると、ドライヤーを持った青波に座れと、床を指さされた。

「自分でできますけど」

「いいから、早く。夕飯が冷める」

そう思うのなら大我たちと先に食べてれば?という言葉は感じが悪いので呑み込んでおく。

「青波さん、過保護です」

「過保護?誘拐してきた女の子を見張ることは、当然だろう」

青波はドライヤーのスイッチを入れて、クシで梳かしながら風を当ててくれた。

青波さんの言動は見張りとは、違う気がする。見張りは大我のように、怖い顔して逃げないよう監視するだけの仕事だ。
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