恋の病に、堕ちてゆく。
ドライヤーが終わるとタイミングよく、大我が食事を運んでくれた。

今夜はカレーライスだ。
食欲をそそるスパイスの香りが漂う。

これまでと同じようにテーブルを挟んで向かい合うが、青波の顔を直視できなかった。


「大丈夫?まだ気持ち悪い?」

俯き加減だったからか、心配してくれた。

「ちょっとした貧血だったので、もう治りました」

「良かった。冷めないうちにどうぞ」

「いただきます」


両親と離れて学校にも行けない生活は非日常だけれど、お風呂に入って、ご飯を食べて、勉強をして、眠って。そんな生活のルーティーンは変わらない。

まだ解放されていないし、これからどうなるのかも分からない状況。それでも監禁生活の中にも、穏やかな時間があったことを私は忘れられないだろう。
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