恋の病に、堕ちてゆく。
車から降り、警備員さんに案内されて裏口から中に入った。たまにお父さんの忘れ物を届けに来ることがあったが、関係者が使用するこの裏口を使っていた。

裏口にも警察の方が待機しており、事前に話が通っているようでスムーズに中に入れた。

廊下を進んで3つ目の扉がお父さんの研究部屋だ。理科の実験で使うような小さな道具がいくつも並んでいる横に、大型設備がある。お父さんは決して私を研究部屋には通さず、いつも入口までだった。


青波は迷いもせず研究部屋の前に立った。そしてドアをノックする。

「青波です」

「加奈!」

すぐにドアが全開に開き、白衣姿のお父さんが飛び出しできた。普段は絶対、そんなことしないのに、私はお父さんの胸に飛びついた。


「お父さん!」

「加奈、大丈夫か。怪我はないか?」

お父さんは私の頭を乱暴に撫でてくれた。

「うん、元気だよ」

「そうか…良かった」
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