恋の病に、堕ちてゆく。
「加奈、疲れただろう。中に入りなさい」

「え?入ってもいいの?」

「ああ、すぐに飲み物も用意させるよ」

お父さんの背中越しに見える研究部屋は難しい書籍がたくさん積まれていて、英語には見えない難しい文字が書かれたプリントが何枚も壁に張ってあった。


「君塚さん、私たちはここで失礼します」


青波の言葉に、別れの時間だと知る。

そっか、ここでお別れなんだ。


「青波くん、大我くん、四季くん。君たちには心から感謝している。娘を守ってくれてありがとう」


深く深く頭を下げたお父さんの横で私もそれに倣う。

ありがとうございます。
こんな私を守ってくれて。

「昨日の件では加奈さんを危険に晒してしまい、大変申し訳ございませんでした」

今度は青波が頭を下げる。大我と四季も固く口を結び、頭を下げた。

昨日のことは私の身勝手さが原因で、3人には少しの落ち度もないのに。


「こうして無事にまた会えた。それで十分だよ。ありがとう」

お父さんの言葉に大きく頷く。

最後まで守ってくれたーーそれが全てだ。
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