ひとつのおむすびがきっかけで、凄腕救急医に溺愛されることになりました
いや。〝やって来た〟というより、半分は強制だろう。

面倒くさいことに、彼女は藍木総合病院医院長の娘。さらに……医院長は、俺と彼女を結婚させたいようだ。

今日のこの講習会だって、初めは俺1人の予定だった。それなのに、ちょうど1週間ほど前『娘も同行させる』と医院長から連絡が入ったのだ。

しかし、彼女自身のの勉強のためではない。
俺に対する好意に気付いていて、同行させたのだろう。


「よければ、その……ご一緒しませんか? この近くに、おしゃれなカフェがあるそうなんです」
「いえ。結構です」


きっぱりと断って、俺はその場を離れた。

こういうのは、本当に面倒くさい。
俺から学びたいとはこれっぽちも思っていないクセに、ただ俺が好きだという気持ちだけで同行するような女性に興味はない。

一緒にいて噂にでもなったら、迷惑極まりない。


「さて。どうするかな」


ほぼため息のような独り言を呟いて、俺は大学病院を出る。

藤沢先生に付き纏われては困ると思って病院から出て来たものの、正直この辺りのことはよく知らない。


「歩くか……」


コンビニのおにぎりでも買って、空腹をしのごう。

少しでも食べておかないと、午後からの講習会に影響が出ても困る。
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