幼なじみの不器用な愛し方
こんなに素直に落ち込む有斗、幼なじみのままだったら見られなかったかもしれないな。

愛おしく思う気持ちのままに、そっと有斗の手を握る。


「有斗はバカだね」

「……言うに事欠いて、バカってなんだよ」

「誕生日当日に出掛けられないことくらい、どうってことないんだってわかってないんだもの」


有斗の気持ちはちゃんとわかっている。

気持ちを大切にしながら、現実もちゃんと見据えていることを知っている。


「わたし達は普通の恋人ではいられないけど、有斗がそう思ってくれてるって知ってるから、わたしは寂しくないんだよ」


有斗の仕事は格段に増えていて、これからもっともっと有名になっていくだろう。

ままならないことがある度に、こんな風に心を揺らしていたのでは身が保たない。

有斗も、わたしも。


「ははっ。やっぱ美月には敵わねーな」


ありがとな、と小さく呟いて、くしゃっと笑った有斗はわたしが握る手をそっと解き、そのまま腕を回した。

わたしはそこに素直に収まって、深く息を吸い込む。
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