先生!見ちゃダメ!
―――ピンポーン
…本当におうちに突撃してしまった。ドキドキしながらインターホンから声が聞こえるのを待つ。
鳴らしたことすら数年ぶりだ。
暫く待つと、千晴くんママの声がした。私の名前を呼ぶ優しげなその声は、歓迎の色が滲んでいた。
「千晴くん、いますか」
ドキドキしながら上ずってしまった声に、緊張が積もった。
けれど幸い、そんなことを気にする様子もなく、“ああ、千晴ね、呼んでくるわ~”と言いながら千晴くんママが遠ざかっていく音が聞こえた。
千晴くんに、会えるんだ。
こんな簡単に会えるならもっと早く来ればよかった。頭ではそう思いながらも、心臓はバクバクだった。
会うつもりで来たけど、本当に会えるとは思っていなかったから、まだ準備していたいと心臓が叫んでる。
けれど私の心臓事情なんて知るはずもなく、玄関のドアが開けられた。
「花恋、どうしたの」
少し不思議そうに尋ねてくる千晴くんに、胸がキュンと鳴るのを必死に抑える。
まさか馬鹿正直に“アプローチしにきた”なんて言えないから、上手く回らないままの頭で、咄嗟に考える。
「学校、せっかく一緒なのに、話せないの寂しいなって…、千晴くんが実習の間、もうちょっと話せると思ってたから」
「…だから、会いにきちゃったの?」
優しく諭すような声にうん、と頷くと、少しの間静寂が訪れた。
どうしよう、やっぱり迷惑だったかな…と頷いたままの頭を上げられないでいると、千晴くんが言った。
「花恋、課題は?」
ああ、これは。家で大人しく勉強してなってことなのか。
「まだ、だけど…帰ったらやるつもり、」
「じゃあ1回帰って取っておいで。一緒にやろ」