制服レモネード
「……梓葉っ」
「えっっ!あなた、さっきウェディングドレス着てたモデルの子よね!?」
私の登場のタイミングに驚いた矢吹さんの声は、隣にいた夏穂さんと言う人の声にかき消されてしまった。
「あ、はい……一応」
「え〜!嬉しい!さっき、あなたの歩いてるところずっと見てたの。あ、実は私、ティーン向け雑誌の編集部で─」
突然、私の両手を握って話し出す夏穂さんに呆気にとられていると、
「おい、夏穂、困ってるだろ」
隣から矢吹さんの声がした。
「あ、ごめんなさい。っていうか、授久くん、知り合いなの?この子と」
「……ああ、俺の────」
「あっ、ただのお隣さんで!」
矢吹さんの声に被せて、慌ててそういった。
矢吹さんがなんて答えるのか、聞くのが怖かった。
こんなガキんちょのことを、さらっと、彼女ですなんて紹介できるわけがない。
それに────。
濱谷くんが見たっていう、矢吹さんの浮気現場。
その相手は目の前にいる夏穂さんかもしれないし。
「梓葉、こっちは、今一緒に仕事をしているクライアントの氷坂夏穂さん」
「ちょっと〜何その紹介の仕方。一応、授久くんの高校の頃のクラスメイトね」
「あ、同級生……。えっと、岡部 梓葉です」
嫌な予感しかしない。
私が矢吹さんを知る前から矢吹さんを知ってる人。
昔から知り合いの同級生と仕事で偶然一緒になってって、よくあるパターンじゃん……。
「ふふっ。よろしく。あっ、もしかして2人なにか待ち合わせてた?私、邪魔しちゃったかな」
「そーだね。すげえ邪魔してる」
矢吹さんの意外な反応にびっくりする。
そんなはっきり言っちゃうんだ。