【Amazonベストセラー入りしました】偽花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとハラハラしていたらイケメン王が溺愛してくるんですが?
「俺たちの鼓動は、たしかに重なった——」
 と呟いて、リオ・ナバはたくましい胸を押さえた。
 砂漠の金色の砂のような複雑で美しい色の短髪。鋭い切れ長の目の奥には、限りなく透明に近い色味の瞳が光っている。
 たくましい胸筋に張り付くようなシャツはシンプルで上質な黒いシルク。フロックコートは脱いでいる。そんなくつろいだ姿で、書籍に囲まれた執務室に座っていた。
 リオ・ナバは、数刻前に自分に起こったことがとても不思議だった。
 ナリスリア国から嫁いできたオメガ王女——いきなり、『自分は偽者です』とひれ伏した王女を見た瞬間に、王女の心臓の鼓動がはっきりと聞こえたような気がしたからだ。
 そしてそのドキドキと鳴るオメガ王女の鼓動は、自分の胸の鼓動のリズムと数秒も違わずピタリと重なったのだ——。
「ほんとうに不思議だ、こんなことがあるのか?」
 リオ・ナバはそのとき、アルファとして強い衝動も感じた。『このオメガ王女の世界のすべてを、俺だけで満たしたい』という、クレイジーな想いだ。
「つまり、俺たちは運命の番ということだ——」
 運命の番——とは、天の導きによって生まれながらに結ばれる運命のアルファとオメガのこと。
 昔から伝わるこの類の話を、リオ・ナバは今まで、『ロマンチックな作り話』だと思っていた。
 だけど、今は違う——。
「俺たちは運命の番だ——」
 そう呟いて、リオ・ナバはハンサムな顔に笑みを浮かべた。
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