【書籍化決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~

王太子Side


 ハミルトン王国の第一王子、王太子にして王位継承者であるヴィルヘルム・ディ・ハミルトン。それが私の名前だ。
 
 私には幼い頃から親同士が決めた婚約者がいた。公爵家の令嬢で、名はオリビア・クラレンスという。
 彼女はラベンダーピンクの髪をしていて、大きな釣り目だが、最初に会った時は目に涙を溜めてプルプルしながら怯えていた。しかし、一生懸命挨拶してきた姿は可愛らしかったな。
 私が10歳の時でオリビアが8歳の時に初めて顔合わせをした。私は存外オリビアを気に入り、相手もそうである手ごたえを感じて素直に喜んでいたはずだった。その後正式に婚約が結ばれ、顔を合わせてはよく一緒に遊んだし、一緒に学び、共に国を治めていこうと思えるパートナーに出会えた事を幸せに思っていた。

 いつからか彼女に対して良くない噂が聞こえるようになり…………男好きだとか、くだらないものばかりで本気にはしていなかったのだが、彼女を気に入っていた私は、彼女が違う男と話している事が無性に腹立たしい気持ちが芽生える。今思えばつまらない嫉妬だ。
 
 噂と相まって、段々とそんな彼女の存在に苛立ち始めた。
 
 私に近づく女には威嚇するのに自分に寄ってくる男には愛想笑いをしている姿も気に入らない。
 私が素っ気なくなればなるほど彼女は一生懸命私の元へ通ってくる…………最初はそんな事に周りの男どもに対して優越感を感じ、気持ちがいいものだと浸っていたものの、最近はそれすらも煩わしく思えるほどになっていた。
 
 自分の気持ちが分からなくなって、どうするべきか考えていた時に事態は思わぬ方向に動いていった。

 今まで私に会いに学園にまで通ってきていたオリビアが、全く学園に来なくなったのだ。1日と空けた事はなかったのに3日も来ていない。何かおかしいと思い、王宮に来ていた公爵に聞いてみようとしたところ、公爵も休んでいると言う。
 あの真面目な公爵が休んでいるとは何事…………私はたまらず父である国王陛下に聞いてみる事にした。
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