【書籍化決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~

 さすがに男の人の力には敵わない…………腕が全く動かない。


 「このハミルトン王国の王宮でこのような事、許される事ではありませんわ。すぐにこの手を離し……」

 「うるさい口だ…………」


 冷たい表情で呟いたかと思うと、徐々に顔が近づいてくる――――

 これは口を塞がれるパターン?!


 この世界に来てファーストキスをこんな極悪な人相の人に奪われるなんて、冗談じゃない…………イザベルの家で教えてもらっていた護身術で……!
 
 私は掴まれていた自身の手首を外側に捻った……すると相手の手首が緩んだのでそのまま掴んで、両手でレジェク殿下の背中までぐるんと捻る…………勢いに任せて両手でやってみたけど上手くいったわ!


 「な、何をする…………っ!」

 「か弱い女性に手をあげておきながら、何をするとは……っおかしな話ですわね。あなたのせいで手首が真っ赤ですわ。陛下に泣きつこうかしら」

 「おのれ…………こちらが大人しくしていれば……」


 どちらにしてもこの体勢は長くはもたない。早く誰かを呼びにいかなければ…………そう思って顔だけで後ろを向いた時――――中央庭園の鬱蒼と茂る壁際の木々たちの中から、誰かが飛び出してきた――――
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