【書籍&コミカライズ作品】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~【第三部完結】
「あなたって、笑う事もあるのねぇ。蛇のようにねちっこく見えたんだけど」
「し、失礼な方ですね……!そういうあなたは何なのです?!」
「ふふん、驚かないでよ。私は……むがッ」
私は自身の正体を明かそうとするマリアの口を咄嗟に塞いだ。
(ダメよ……!神の信仰が深い国で聖女なんて言ってしまったら危険よ!)
彼女の耳元でそう囁くと、私の言葉に納得したのか頷いたのでホッと胸を撫でおろし、彼女を解放したのだった。
「彼女はマリアって言うの。私の従妹なのよ。ね!」
私の提案に首を縦にブンブンと振り、話を合わせてくれたので、何とかレジェク殿下も納得したようで話題を変えてくる。
「まぁいいでしょう。私がここに来たのは、皆様に温泉に入らないかと勧めに来たのです」
「この国にも温泉があるの?!」
「はい、知っての通り、我が国には火の神が宿っているビシエラ山があります。この山の恩恵により温かい湯が湧き出ているのです。とても気持ち良く疲れも取れるかと……」
「火山性温泉ね。それは疲れも取れそうだし、お肌にも良さそう!」
私の言葉に女性陣からは喜びの声があがる。
そんな話をしている最中に、城が微かに揺れ始めた。本当に微かな揺れだけれど、地鳴りのような振動にソフィアが私の服をギュッと握る。
「この揺れは?」
「これはいつもの事ですよ。火の神ゴンドゥーラの鼓動です。我々ドルレアンの民はいつも神と共に在ると感じる事が出来る。そして我が城は一番近くで神の鼓動を感じられるので、とても幸せな事なのです」
レジェク殿下がうっとりとしながら祈りを捧げる姿を見て、この国の信仰心が非常に厚い事がヒシヒシと伝わってくる。
だからお城が山の麓に建てられているのね。
王族が一番神に近い場所に在る為に……でもこの揺れって、神というか普通に山によるものよね?
神が宿っているものだと信じられているから、この揺れすらも神の鼓動だと思われているとは……だからと言って、私がそんな事を言おうものなら「神を冒涜するのですか?」と激昂されそうなので黙っておく事にしよう。
ひとまずうっとりとしているレジェク殿下をスルーしながら、私たちは意気揚々と温泉へ行く事にしたのだった。