【書籍化決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~

王太子Side


 オリビアが領地に出発してから8日ほど経った。

 
 ゼフからの知らせには驚くべき事がつらつらと書かれていて、何度領地に飛んで行こうと思ったかしれない。ゼフとのやり取りは主に伝書鳩を使ったものだが、王家の鳩は優秀で一時間足らずで正確に届く。
 
 その日の出来事が淡々と書かれていたのだが、まず1日目に少女を拾ったというのだ。少女は5歳だと言う。物乞いをして殴られた少女を助けたと書いてあったところまで読んで、オリビアはとても優しい女性なのだと誇らしい気持ちになった。
 
 しかし、問題はその後だ。その少女を領地まで連れて行く事になったと。素性の知れない者を連れて行くというだけでも心配だと言うのに物乞いを…………物乞いの中には仕事でやっている者もいる。
 
 
 オリビアはそういった事とは無縁に育ったゆえに分からないのだろうな…………同情心や優しさは彼らをつけ入れさせる入口になる。そういう者を従わせるのは、優しさよりも力だ。財力や権力、肉体的な力、魔力……そういった力で支配しなければ、優しさを利用されて終わる。
 
 
 善良な心を食い物にしている連中もいるのだ。
 
 
 確かに本当に救いが必要な者もいるだろう。果たしてその少女がそうであったのか…………ゼフの手紙には特に害はなさそうだと、後に書いてあったから良かったものの。ゼフも同じような出自であるから、自分と重ねている部分もあるのだろうな。それにしても…………

 
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