【書籍化決定】悪役令嬢に転生した母は子育て改革をいたします~結婚はうんざりなので王太子殿下は聖女様に差し上げますね~

 「オリビアが全く寂しそうにしている内容が書かれていない」

 
 私はつい口から不満が漏れてしまう。私と離れて領地にこもっている間、私のいる王都に帰りたいという素振りは全く感じられない。あんなにずっとそばにいたのに…………領地生活を満喫している様子が私をモヤモヤさせていた。

 
 「王太子殿下、気持ち悪い事を言っていないで手を動かして下さいね」

 
 そう言って私に山になった書類を持ってきたのは、私の側近である辺境伯令息のニコライ・ウィッドヴェンスキーだ。彼は心技体揃った非常に有能な人物で、私の幼馴染でもある。ちなみに彼が生徒会の副会長だ。

 
 辺境伯というだけあってニコライの家は強大な軍を持ち、我が国の国境を守っている。辺境伯は国にとってとても重要な地位であり、味方にしておくに越したことはないと、幼い頃からニコライとは交流を深めるように父上に言われていた。
 言われなくともニコライとはウマが合い、こうして今に至るまで私の側近としてそばにいてくれているのだが…………幼い頃から私のオリビアに対する拗れた気持ちを知っているのもあり、このような冷めた目で意見してくるのだ。

 
 
 「私にはオリビア様が不憫でなりません」

 
 「…………不憫とは?」
< 80 / 512 >

この作品をシェア

pagetop