目と目を合わせてからはじめましょう
「あっ、足が……」

すると、雨宮が足元に来て、足を閉じようと持ち上げた。

「痛〜い!」

あまりの痛さに悲鳴をあげる。

「すみません」

雨宮は、今度は少しづつ足をずらし始めた。

「このぐらいなら、大丈夫ですか?」

情けない。見ず知らずの大男に、足を閉じてもらうなんて。痛い痛いと叫ぶ私に、雨宮は額に汗をかきながら、すみませんと何度も頭をさげる。

やっと足が閉じたが、スカートが捲り上がったままだ。スカートに手を伸ばそうとしたが、届かない。

すると、雨宮の手が伸びてきて、スカートをさっと下ろした。

ああ〜〜 最悪

「大丈夫ですか? 起き上がれますか?」

雨宮の腕が、支えようとしたが、あまりの痛さに顔を顰める。

「失礼します」

雨宮はそういうと、私の膝の裏と背中に手を入れた。すると、私の体はふわりと浮きかがった。

「きゃぁっ」

軽々とお姫様抱っこし、リビングのファーの上にゆっくりと下ろされた。

廊下の床より、かなりマシだ。

「本当に、申し訳ない」

頭を下げる彼に言った。

「水…… 冷蔵庫に……」

「はいっ」

雨宮は、勢いよく走ってキッチンの冷蔵庫からペットボトルの水を取り出した。蓋を開けると、私の目の前に差し出してきた。ペットボトルを受けるが、手に力が入らず、プルプルと震えてしまう。

雨宮がペットボトルを持つ私の手の上に自分の手を重ねて、口元に近づけた。いつの間にか、私の体も雨宮に支えられている。
グビグビと、水を飲み干すと、やっと落ち着いてきた。

その時、雨宮の視線が窓に向いた。すっと立ち上がり、鋭い視線を窓に向ける。

「どうかしましたか?」

「いえ、気のせいのようです」

「そうですか。あの、もう結構ですので、お帰り下さい」

水を飲んだせいか、トイレに行きたくなってきた。
< 12 / 171 >

この作品をシェア

pagetop