目と目を合わせてからはじめましょう
 彼女は、俺の方をチラリとみると、何故か一瞬少し驚いた顔をした。

 もちろん一人で遊べない子供ではないのだから、じいさんたちから離れて彼女は大きな浮き輪を抱えて行ってしまった。その後ろ姿に、なぜか違和感を感じる。どこかで見たことがあるような?


 プールに浮き輪を浮かせて乗ろうとする彼女の姿が見えるが、なんだか危なっかしい。なんとか浮き輪に乗ると、俺の方がため息をついてしまった。

 「どうしたのかね?」

 じいさんが、俺の方を見る。

 「いえ」

 慌てて視線を彼女から外し、辺りを見回す。平日ではあるが、天気もいいし人はそれなりにいる。


 見るからに軽そうな若い二人組の男が、プールの周りをうろうろしている姿が目に入った。嫌な予感がする。足に少し力を入れて身構えた。

 やっぱり。

 咄嗟に体が動いてしまった。足早にプルーへ向かうと、一気に飛び込んだ。水から顔を出した瞬間に、二人組の男を睨んだ。彼らは、いそいそとプールから離れて行った。


 「どうしたんですか?」

 浮き輪に浮いた彼女が不思議そうに俺を見ている。

 どうしたんですか?
 そうだよ、どうしたんだ俺?

 「暑かったので、水に入りたくなっただけです」

 この答えが正しかったのかはわからない。

 「ああ、そうですかぁ……」

 腑に落ちないような彼女の声がした。


 プールから上がって気づく。遠くで、ニコニコと手を振っているのが、俺が警護している相手だったと。

 だが、またもや別の男が、彼女に向かって泳いでいる。

 ああー 思わず出てしまった足を。引っ込めた。

 「ほらほら、危険が迫っておるぞ」

 じいさんがあっちいけと言わんばかりに手をひらひらと振る。

 一瞬考えてみたものの、俺は、ぺこりとじいさんに頭を下げると、プールへと走った。プールに飛び込み見知らぬ男睨むと、また、じいさんの元に戻る。

 しばらく、じいさんの後ろに立っていたが、また、彼女に声をかけようとする男が目に入っている。

 「ほれほれ」

 俺の動きを見ているかのように言うじいさんの声に、またプールに飛び込んだ。

 頼むから、もっと危機感を持ってくれ。


 やっと、彼女がプールから上がった。
 ほっとしている場合ではない。
 これはまずい。彼女の水着姿は、男の目を引く。
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