目と目を合わせてからはじめましょう
 案の定バーカウンターに並ぶ彼女の姿を、チラチラ見ている男がいる。

 上着ぐらい羽織れよ。苛立つ。なんだか分からないが苛立つ。


 「ああ、わしも喉乾いたわ。何か買ってきてくれるか?」

 じいさんの言葉と同時に走り出していた。


 そして、息を整えるとその男の視線を遮るよに彼女の横に立った。

 「お爺様が、トロピカルジュースが欲しいそうです。お嬢様にあちらで一緒に召し上がるようにとの事です」

 彼女に話しかけたが、俺だって任務中なのは承知だ。視線はじいさんから離さない、というか彼女の水着姿を直視する事か出来ない。もちろん、じいさんは一緒に飲もうなどとは言ってない。

 「そうですか。ありがとうございます」

 ウエーターが運んでくれると言うので、彼女と一緒に並んで歩いた。この時に気づいた。俺の海パンと彼女の水着がお揃いの柄な事に。

 なぜ? 偶然なのだろうか?


 俺は、自分のシャツを脱ぐと、彼女の肩にかけた。お揃いが嫌なわけじゃない。彼女の姿を変な目で見る男達を、いちいち走って追い払うのが面倒なだけだ。俺の仕事は、じいさんの警護なのだから、彼女に近づく男どもを追い払うのは俺の仕事じゃない。

 「日焼けするぞ」

 不思議そうに俺の方を見る彼女に向かって言った。

 全く、面倒だ。
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