目と目を合わせてからはじめましょう
 ビーチハウスの方を見ると、彼女とビーチハウスの男とのやりとりが聞こえてきた。

 「雨宮君は、ジェットバイクには乗れるのかね?」

 「一応ライセンスは持ってますが」

 康介さんが、ビーハウスの中にいた中年の男を手招きし、何やら話している。


 「なんだか、沖の方が心配になってきた。悪い奴がおるかもしれん、見てきてくれ」

 じいさんが、またもや無謀な事を言い始めた。

 「はあ?」

 思わず、間抜けな声が出てしまった。


 「ビーチハウスのオーナーに、ジェットバイク貸してもらうように頼んであるから。湯之原さんの警護はホテルのガードマンに頼むから大丈夫だ。沖の方を見てきてくれ」

 康介さんが、真面目な顔で言い終えるとウインクした。

 どういう事だ?


 俺にジェットバイクに乗れという事なのか?

 ジェットバイクの置いてある方を見ると、彼女とインストラクターの男が歩いて向かう姿が見えた。その瞬間、頭から胸にかけて、ピッキンっと何かが走った感覚が起きた。

 急いで彼女の元に向かう。ライセンスをオーナー見せると、何も言わず頷かれた。


 何が起きているかわからず、ぽわーとした顔で彼女が俺の方をみた。

 「本当に運転できるんですか?」

 全く! 呑気なものだ。でも、その姿に、胸の音が大きく波打った。


 「ほら、乗りたいんだろ」

 胸の音を隠すように俺は、ライフジャケットをすぽっと彼女に被せた。


 ライセンスを持っているとは言え、海に出るのは久しぶりだ。背中にしっかりと捕まった彼女の、歓声なのか悲鳴なのかわからない声が聞こえる。彼女が楽しんでいるのか分からず不安になって声をかけた。

 「怖いですか?」

 「大丈夫! 最高!!! 気持ちいい〜」

 その言葉に、俺もなんだか気持ちが高揚してきた。
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