目と目を合わせてからはじめましょう
 げっ。ここから、いくら急いでも空港まで二時間近くかかる。最終便に間に合うだろうか?
 航空券の確認をしようと、ポケットからスマホを出した。

 「そういえば、那覇で何とかというアーティストのコンサートがあるとかで、ホテルもチケットも予約が取れないと、康介くんが言っておったな」

 スマホのサイトを見るが、航空券おろかホテルも満室だった。まじか……


 今夜那覇まで行かないにせよ、この家族と一緒に行動する必要はない。自分の部屋に戻ろうとしたのだが……

 「まあ、一緒に食事でもしよう。落ち着いて食事も出来なかっただろう?」

 確かに、沖縄に来て落ち着いて食事などしていない。というか、慌ただしい食事は今に始まったことじゃない。

 「いえ。私は……」


 「ああー 雨宮さん、任務が終了して、一緒に旅行出来るらしいじゃないですか?」

 後ろから、無邪気に声をかけてきたのは、彼女の弟悠矢だった。その横に、二人の弟もいる。


 「いえ。旅行するつもりは」

 「せっかく来たんだから、いいでしょ? とりあえず、食事に行きましょう」

 弟達に、両腕を取られ、レストランへと向かった。その気になれば、捕まれている腕など簡単に外せるが、素人相手に怪我でもさせたら…… そんな事を考えていたら、あっという間にレストランの椅子に座らされていた。レストランと言っても、ホテルの中の沖縄料理の居酒屋風の店だ。

 「何飲みますか? オリオンビールでいいですか?」

 「いえ、アルコールは結構です」

 「もう、任務中じゃないんだから、飲めばいいのに」

 そう言いながらも、悠矢は俺の前にウーロン茶を置いた。だが、悠矢の手にしているグラスからは、ブランデーの香りがする。思わず口を抑えた。一杯目からブランデーなんて、この男はどういう感覚をしているんだ。


 それぞれに集まりだした人達がテーブルに座った。

 正直、居心地が悪い。何故かテーブルの真ん中に座らされ、ぐるりと囲われている。殺し屋に囲われている方がまだマシかもしれない。


 テーブルいっぱいに並べらた沖縄料理。

 「さあ、雨宮さんも遠慮せずに食べててください」

 俺は、見逃さなかった。悠矢が俺のラフテーに自分のグラスのブランデーをかけたのを……


 毒薬でも盛られ気分だ。
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