婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~



数日後、私は仕事を終えると駅方面へ向かった。
これから栞さんと会うのだ。
彼女とは定期的にランチやショッピングをしながら近況報告をし合っている。

「小春さーん!」

栞さんの弾んだ声が聞こえる。彼女はずいぶん打ち解けて、表情も声色も以前より柔らかくなった。クールビューティなのは変わらないけれど、よく知ると感情豊かで面白い。
あと、お酒も強いんだよね。今日もハイペースでジョッキを煽る栞さん。その動きもすっかり様になっている。

「小春さん、実は私、プロポーズされました!」
「えぇ! ほんとに?おめでとう〜! じゃあ、ご両親も?」
「はい! 認めてもらえました」

好きな人とのことで、お父さんと喧嘩したり彼との仲を離されそうになったり。紆余曲折あって、こんなにおめでたい話を聞けるとは。

「小春さんにはたくさん話を聞いてもらいました。友人と呼べる人が少ない私にとって、相談できる相手がいるのはすごく心強いです。彼とのことも、小春さんがいなかったら挫けていたかも。 ありがとうございます、小春さん」

ふわりと微笑む姿は本当に幸せそうで、私はつい涙ぐむ。

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