婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
同居初日の夜はあっという間に過ぎた。夕飯は色々考えたけど、結局いつもの駅前の居酒屋さんにした。違うのは、私たちが同じ場所に帰るということ。守衛のいる門を通る時、実家に帰るのとは訳が違うのでちょっと緊張していたら夏樹くんに笑われた。

そして入浴。お風呂が広い。実家の浴室の何倍あるんだろう、これ。
部屋着に着替えて手早く髪を乾かし、夏樹くんに上がったことを伝える。と、彼は私を見て固まった。

「夏樹くん? どうしたの…」
「小春さん、俺、あなたとちゃんとお付き合いするまでは手を出さないって決めてるんです」
「てっ、え!?」

唐突な切り出しに素っ頓狂な声を上げる。

「でも……それは、さすがに小春さんが悪いです。俺の理性あっさり壊そうとしないでください。 足、寒くないですか?それしか持ってきてないなら貸します。どうかスウェットでお願いします」

夏樹くんは無表情だ。淡々と言って、自分の部屋からスウェットを取ってきて私に投げ渡す。

「あ、ご、ごめん! 部屋が暖かいし、つい…いつものくせで…」

うん、これは、私が悪い。迂闊だった。気をつけよう。ここは自分一人の家じゃない。楽だからって真冬でも家ではショート丈のパンツを履く習慣を、持ってきてはいけなかった。

「暖房、温度下げますか?」
「大丈夫です。 とても暖かくて過ごしやすいです!これ、お借りします」

そそくさと脱衣所に戻って、スウェットに着替える。明日にでも、早急に部屋着を買い足そう。そうしよう。

しばらくして夏樹くんが入浴を終えてリビングに入ってくる。
濡れて勢いのなくなったくせっ毛にラフな格好の彼は新鮮で面白い。それにしても、お風呂上がりなのに変わらずイケメンで部屋着でもスタイルが良いのがよくわかる。

夏樹くんは冷蔵庫の水を取り出し、「飲みますか?」って私にも注いでくれた。ありがたく頂戴して、コップを手に考える。
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