婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~


その翌日、目が覚めて一瞬、いつもと違う景色に頭が追いつかない。
あぁ、そっか。私、翔くんの家に転がり込んだんだ…。
それにしてもこのベッド、めちゃくちゃ寝心地が良い。こう、体にフィットする感じ。毛布はふわふわで暖かいし、なんなの?高級寝具なの?

まだ起ききらない頭のまま体を起こし、名残惜しくもベッドから離れる。
部屋の外に意識を向けて、なんだか懐かしい音が聞こえることに気づいた。包丁がまな板を叩く小気味よい音。部屋を出たら、お母さんがおはようって朝ごはんを出してくれて。その感覚につられるようにリビングに入ると、食欲をそそる優しい香りにふわりと包まれる。

「おはようございます。 小春さん」

お母さん…じゃない。翔くんだ。 まだ見慣れない広々としたリビングダイニングを一周見渡して、それからキッチンに立つ翔くんを捉える。

「…おはよう」
「食事のこと、昨日何も聞かなかったですね。 食べられないものとかありますか?」

起きたらエプロンをつけた翔くんがキッチンにいる。いや、ここは翔くんの家なんだけども。 信じられない光景だ。テーブルには2人分、ランチョンマットとお箸が並べられていた。

「大丈夫……翔くん、それ朝ごはん作ってくれてるの?」
「はい。 大したものではないですけど。もうできるので、座っててください」

言いながらテキパキと配膳されていく朝食たち。白米に味噌汁、焼き魚、卵焼きとひじきまである。なに、この豪華なメニューは。
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