婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
結果的に、誤認していたのは先方だった。つまりこちら側に不備は無いということ。けれど、相手は今日この時間を確保していてリスケは難しいとのこと。翔くんに頼んだ仕事もあるし、さすがに今すぐにどうこうってわけには…と思ったものの。
「できてます。 小春さん、行きましょう」
「分かってたけど…夏樹くんてめちゃくちゃ仕事できるんだね……」
「小春さんのご指導のおかげです」
先輩を持ち上げるのも忘れない。私はおおまかに事態を上司に報告してオフィスを出た。電車よりも早いと翔くんの提案で車に乗り込んで、彼の運転で出発したところで少し肩の力が抜ける。
翔くんのこの、急な仕事にも動じない冷静さはとても一年目とは思えない。そういえば翔くんはここに来る前、どこにいたんだろう。そういう話は聞いたことがない。彼は私を知ろうとするけれど、自分のことはあまり話してくれないのだ。私が聞いてこなかったってのもあるけど…