婚前どころか、フリですが ～年下御曹司？と秘密の溺甘同居～

「夏樹くん、前はどの部署にいたの？ 私たち広報部からすると、夏樹くんて急に現れたスーパールーキー、って感じなんだよね」
「一応、営業と警備課にいました」

多くは語らないのが翔くん。ていうか、25歳で既に3箇所経験済みってなにごと？
とますます突っ込みたくなるものの、聞いても彼は教えてくれない気がする。でも、興味はあるから当たり障りのない所だけ教えてよ。

「警備課ってすごく厳しいところだよね。 現役の警察官もいるって聞くけど、翔くんは体術とかも習ったの？」
「はい。1ヶ月道場に篭もりました。あれはきつかったです」

1ヶ月…って多分かなり短い。警備課というのはその名の通り街の安全管理担当の部署で、私の実家や翔くんの自宅があるあの住宅街の管理棟が主な管轄だ。街全体のセキュリティと治安維持を目的としているため、警察官が引き抜かれたり、一般人もかなりストイックに鍛え抜かれることで有名だ。警備課でまともに現場に出られるようになるには、普通の人は早くても半年かかるとも言われている。

だから1ヶ月で道場籠もりを終えたなんて、エリート中のエリートだ。
うん、でも納得。翔くんだもん。それぐらいやってそう。