婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
「じゃあ、何かあっても翔くんがいれば広報部の安全は守られそうだね」
「俺が守りたいのは小春さんだけです。 けど、まぁ、小春さんが大事にしている人たちなのは分かるので」
守ってくれるんだ。翔くんは優しいからなぁ。頼りになるし。
「というか、警備課の本拠地であるツインタワーにエマージェンシーとか、洒落にならないです」
「たしかに。 かなりの異常事態だね」
ごもっともな意見に思わず笑いがこぼれる。
と、彼は少し声のトーンを抑えて言う。
「さっき、ミスが分かった時…」
車は赤信号で停車する。全くと言っていいほど揺れない丁寧なハンドル操作をする手を見ていたら、翔くんがこっちを向いた。
「俺のこと信じてくれたの、嬉しかったです」
急に話戻すじゃん。びっくりした。素直に嬉しいとか。
「これでも一応先輩だからね。 翔くんの仕事ぶりは、この1年間違いなく私が1番近くで見てきた。 そりゃあ信じるよ」
「…好きです、先輩」
いやいやいや、なんでそうなる! 落ち着け、不意打ちで暴れ出した私の心臓!これはいつもの翔くんの手だ。信号が変わって車が動きだし、彼の視線が前に戻ったのにほっとして言う。
「そんなこと言って、ほんとは自分でもミスがあったとは思ってなかったんじゃない? 翔くん、仕事できるし、基本表には出さないけど、その辺実は自信あるでしょ」
「なんでバレてるんですか」
少しバツが悪そうに顔を歪ませる翔くんに、私はふふんと得意げに笑う。
「言ったでしょ。 1番近くで見てきたからだよ」
「俺にとってはまだまだ遠いです。 小春さん、ガード固い」
「それとこれとは別! ガード緩めるつもりはないから、諦めてもいいんだよ?」
「いえ。 燃えます」
燃えないで! 自分で自分のことを諦めろ、なんて言う日が来るとは思わなかったよ。何度も振ってるつもりなのに、翔くんには全然効いてる感じがしない。
もっと冷たくした方がいいのかな? 私はあなたのことを好きにならない。さっさと諦めてちょうだい、とか? でもそれって何度も伝えてきた。言い方を変えてみる?キャラに合わない…って翔くんには見抜かれそうだな。
あれこれ考えていたら、目的地のオフィスビルが見えてきた。
スマートな駐車をしたかと思ったらさっと運転席を降りて、助手席のドアまで開けてくれる。
「あ、ありがとう」
ジェントルマンにも程がある。私は生きてきて男性にこんなことをされたのは初めてだ。慣れない。翔くんの攻め方には一生慣れない気がする。
エントランスを入ると担当者が待ち構えていて、自分たちのミスと急な対応を詫びられた。電話口でも散々謝られたし、こういうミス自体は私が起こしてもおかしくないことだ。それに、翔くんのハイスペックのおかげで打ち合わせも問題なく進められるだろう。
実際、打ち合わせは問題なく終えた。車に戻り、改めて彼の優秀さに感服する。
「翔くん、もう私がいなくても完璧だね。今日もほとんど1人で進められてたし」
「いえ、俺はまだまだです。小春さんの指導が必要です」
もっともらしく、でもちょっとわざとらしく引き止めるから、おかしくて笑ってしまう。
「はいはい。でもいずれは私から離れるんだからね」
「それは、…分かってます。 だから俺は諦めません。小春さん、俺とデートしてください」
「えぇ!?」
だから、の意味が全然分からないんだけど!それに、デートって何!?
「俺が守りたいのは小春さんだけです。 けど、まぁ、小春さんが大事にしている人たちなのは分かるので」
守ってくれるんだ。翔くんは優しいからなぁ。頼りになるし。
「というか、警備課の本拠地であるツインタワーにエマージェンシーとか、洒落にならないです」
「たしかに。 かなりの異常事態だね」
ごもっともな意見に思わず笑いがこぼれる。
と、彼は少し声のトーンを抑えて言う。
「さっき、ミスが分かった時…」
車は赤信号で停車する。全くと言っていいほど揺れない丁寧なハンドル操作をする手を見ていたら、翔くんがこっちを向いた。
「俺のこと信じてくれたの、嬉しかったです」
急に話戻すじゃん。びっくりした。素直に嬉しいとか。
「これでも一応先輩だからね。 翔くんの仕事ぶりは、この1年間違いなく私が1番近くで見てきた。 そりゃあ信じるよ」
「…好きです、先輩」
いやいやいや、なんでそうなる! 落ち着け、不意打ちで暴れ出した私の心臓!これはいつもの翔くんの手だ。信号が変わって車が動きだし、彼の視線が前に戻ったのにほっとして言う。
「そんなこと言って、ほんとは自分でもミスがあったとは思ってなかったんじゃない? 翔くん、仕事できるし、基本表には出さないけど、その辺実は自信あるでしょ」
「なんでバレてるんですか」
少しバツが悪そうに顔を歪ませる翔くんに、私はふふんと得意げに笑う。
「言ったでしょ。 1番近くで見てきたからだよ」
「俺にとってはまだまだ遠いです。 小春さん、ガード固い」
「それとこれとは別! ガード緩めるつもりはないから、諦めてもいいんだよ?」
「いえ。 燃えます」
燃えないで! 自分で自分のことを諦めろ、なんて言う日が来るとは思わなかったよ。何度も振ってるつもりなのに、翔くんには全然効いてる感じがしない。
もっと冷たくした方がいいのかな? 私はあなたのことを好きにならない。さっさと諦めてちょうだい、とか? でもそれって何度も伝えてきた。言い方を変えてみる?キャラに合わない…って翔くんには見抜かれそうだな。
あれこれ考えていたら、目的地のオフィスビルが見えてきた。
スマートな駐車をしたかと思ったらさっと運転席を降りて、助手席のドアまで開けてくれる。
「あ、ありがとう」
ジェントルマンにも程がある。私は生きてきて男性にこんなことをされたのは初めてだ。慣れない。翔くんの攻め方には一生慣れない気がする。
エントランスを入ると担当者が待ち構えていて、自分たちのミスと急な対応を詫びられた。電話口でも散々謝られたし、こういうミス自体は私が起こしてもおかしくないことだ。それに、翔くんのハイスペックのおかげで打ち合わせも問題なく進められるだろう。
実際、打ち合わせは問題なく終えた。車に戻り、改めて彼の優秀さに感服する。
「翔くん、もう私がいなくても完璧だね。今日もほとんど1人で進められてたし」
「いえ、俺はまだまだです。小春さんの指導が必要です」
もっともらしく、でもちょっとわざとらしく引き止めるから、おかしくて笑ってしまう。
「はいはい。でもいずれは私から離れるんだからね」
「それは、…分かってます。 だから俺は諦めません。小春さん、俺とデートしてください」
「えぇ!?」
だから、の意味が全然分からないんだけど!それに、デートって何!?