婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
5、結構効いたよ




パーティーはあの後すぐに閉幕した。もともと終盤だったこともあり、混乱を収めて要人たちはひとりの怪我なく無事に帰っていった。さすがにこの流れで打ち上げ、とはならず、後日に改めることにして部長陣も早めの帰宅命令を出し社員を帰すことになった。
結局、犯人の動機はやはりパーティーに参加していたある企業への逆恨みで、別の参加者と内通して侵入したらしい。侵入は翔くんが開場前に警備が手薄なことに気がついた後のことで、警備に不備はなかったといえる。…のだけれど、あの後彼らからはご丁寧に謝罪の言葉とお詫びの品をもらってしまった。それだけではなく、なんとあの時の老夫婦からもお礼を頂いた。そんなわけで、今翔くんの家に名の知れた高級菓子折が並んでいる。

そして今日は、終業後に広報部、営業部、警備課のメンバーでお疲れ様会だ。仕事とは別でパーティーに参加していたメンツも揃っているので、本当に部長陣からの日頃の労いといった感じだ。

私は隅っこでのんびりお酒と食事を楽しんでいる。隣には菫もいる。

「それにしても本当に大変だったね。 小春が巻き込まれてたなんてびっくりだよ」
「私もびっくり。やっぱりお金持ちの集まりって怖いなって思った。菫は? どうだった、パーティー」
「どうもこうも、ひたすらにこにこにこにこ表情筋が壊れるかと思ったわよ」

げんなりした様子の菫に苦笑する。旦那さんに付き添って矢野家として参加していた菫。由緒ある家門はやっぱり、人付き合いが大変そうである。あくまで仕事として参加していただけ私は楽だったと思おう。

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