婚前どころか、フリですが ~年下御曹司?と秘密の溺甘同居~
嘘をつくのは心苦しくはある。でも正直に話すには難しすぎる。今はこれが最善だと信じたい。

「姉ちゃんが男とふたりで豪邸に入ってくの見たんだけど。それも一度や二度の話じゃない」

遥太は不機嫌そうに言い連ねる。姉ながら整った顔立ちをしていると思うのに、怒ると目付きがすこぶる悪くなるのが難点だと思うんだよね。
ていうか、これはあれだ。付き合ったりはしてないけど家には通ってますとか言ったら噴火するやつだ。お父さんとか、さっきから何も言わないのが怖い。

「誰なの? そいつ。彼氏?付き合ってんの?」

ごめん翔くん。恋人のフリ、適用させてもらいます。

「…はい。お付き合いしている人がいます」
「俺聞いてないんだけど」

すかさず遥太が突っ込んでくる。言ってないからね。いちいち彼氏ができました、って弟に報告しないでしょうよ。しかもワケありだし…。
難点二つ目、この子はたぶんシスコン気質だ。姉の恋愛事情にこんなにも厳しいのってどうなの?

「小春、本当なの? きちんとした関係なのね?」
「うん。お母さんが心配するようなことはないから大丈夫だよ」

母は娘が変な男と妙な関係を築いていないかが気がかりなようだ。遥太は私に男がいることが気に入らないみたいで、眉間のしわが濃くなっていく。
お父さんは…
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