余命2年の初恋泥棒聖女は、同い年になった年下勇者に溺愛される。
『アホ』

 レイは呆れ顔で手を払った。無数の石が砂に変わる。風魔法の一種。鎌風だろう。

『ち゛ぐし゛ょ~~っ……』

『立て』

 レイは言いながら青色の魔法陣を展開。

『っ!?』

 空中に巨石を出現させた。地属性の魔法を駆使して生成したのだろう。手の平を下に向けて地面に落とす。

『ゲホッ……ゲホ……っ』

 土煙が上がる。ユーリはまともに吸い込んでしまったようだ。苦し気に咽込んでいる。

『何やってんだ。とっとと構えろ』

『なっ……!?』

 やり直し、ということなのだろう。

『~~っ、わーったよ!!』

 ユーリは再び詠唱をし始めた。その表情は大層不満気だ。

(あらあら? もしかして……褒めて欲しかったのかしら?)

 エレノアは都合よく解釈して胸を温める。

『いっけー!!!』

 先程と同じ要領で火球を放った。今度は二発目で破壊。飛んできた石も風魔法で粉砕させた。

『どーだッ!!』

 ユーリは得意気だ。対するレイはやれやれと首を左右に振って。

『まぁ、()()()だな』

『よっしゃー!!!』

()()()だっつてんだろーが』

 ユーリは構わず大喜びだ。レイは呆れて――表情を綻ばせていく。

(まぁ……!)

 エレノアの胸が弾む。念願が叶ったからだ。

 レイは異国人であること、前科持ちであることを理由に人との交流を避ける傾向にあった。

 そのためか感情にブレーキをかけがちで、常々何処か警戒しているような節があった。

 しかしながら、今の彼にはそれがない。肩の力を抜いている。気兼ねなく接しているように見えたのだ。

(ユーリ。貴方のお陰なのね)

 エレノアは祈りを捧げた。この出会いを与えたもうた神に感謝するために。

「っふ、まだまだだな」

 魔王が水をさしてくる。エレノアの細い眉がぴくりと跳ねた。
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