余命宣告された年下社長に、疑似結婚をもちかけられまして。
四話
前回のシーン
俊斗、ほっとしたが、沙織に視線を送る。
せっかく気になっている女性とひとつ屋根で生活できることになったのに。
しかも料理をしてくれていて、めちゃくちゃいい雰囲気だ。
これを逃すなんてもったいなさすぎる。
でも嘘なんかつけないし……。
俺はどうすればいいんだ!


◯俊斗 家(夜)
料理を並べている沙織。
俊斗は、憧れている人が自分のためにやってくれていることに感動。
一方で、病院のミスだったということを聞いて動揺している。

俊斗(健康だったのは嬉しいが……)

今『余命宣告は病院側のミスだった』と伝えてしまったら、この幸せな生活が消えてしまう。
もったいないと感じる俊斗。
しかしいつまでも嘘をついているわけにはいかないと悩む。

沙織、スマホを持ったまま呆然と立ち尽くしている俊斗に視線を移す。

沙織(家に帰ってきても社長として色々なところとやり取りしているんだろうな。あまりストレスを溜めないようにしてもらいたい。ご飯を食べて栄養をつけてもらわなきゃ)

沙織「社長、ご飯を食べましょう?」
俊斗「あ、あぁ」
沙織「栄養のあるものを取って、1日も長く生きていてください」
俊斗「ありがとな。いただきます」

肉じゃがを口に入れると美味しすぎて、目を見開いた。

俊斗(結婚生活って幸せじゃないか? だって、好きな人が目の前で笑みを浮かべて食事してんだぞ? しかも、美味すぎる!)

顔は冷静のまま。
沙織は料理が口に合うか不安で仕方がない様子。

俊斗「沙織、美味いよ」
沙織「ありがとうございます。よかったぁ!」

俊斗、胸キュン。可愛い。あぁ……離したくない。

   ☓  ☓  ☓

食事を終えて。

俊斗「空き部屋を沙織の部屋として使っていいから」
沙織「ありがとうございます」
俊斗「……だけどさ、新婚と言ったらやっぱり同じ部屋で眠るべきだよな?」
沙織「社長、それはハードルが高すぎます……」

泣きそうになっている姿を見て、やっぱりピュアで可愛いと、顔を赤くして喜んで見ている俊斗。

俊斗「じゃあ。ゆっくり進めていこう」

沙織はその言葉に安堵するが、彼には時間がないのだと申し訳ない気持ちになる。
俊斗が生きていていい思い出になったと思えるよう、少しだけ積極的になってみようと決意。

沙織「お、お風呂の時……背中を流すので。声をかけてください」
俊斗「ありがとうな」

頭をポンポンとなでられた沙織は、顔を真っ赤にしてメガネを中指でクイッと上げた。
俊斗は、とりあえず今日は病院の誤診を言わないでおくことにした。一緒にいられる方法を考えたい。


◯オフィス(昼)
俊斗、社長室で仕事をして、一段落ついたところで視線を動かす。
その先にいるのは沙織だ。
料理が上手で、恥ずかしがりながらも背中を流してくれて最高の1日だった。
彼女は幼い頃のことを忘れているだろうが、それでも幸せで、ずっと一緒にいたいと思う。
やはり病院の間違いだったことを伝え、健康だと言って、愛の告白するしかない。そんな決意に満ちている俊斗。

一方の沙織も俊斗を意識する。
回想的に昨夜のことを思い出す。
背中を向けていたとはいえ、全裸の俊斗の背中を洗うのはドキドキしすぎて、仕事中でも思い出すと鼻血を出してしまいそうだった。
膝枕まで要求され、やってしまった。
余命宣告されているなんて信じられない。社長が楽しかったと思える思い出をたくさん作りたい。

◯オフィス・休憩室(夕)
休憩室にドリンクを買いに行こうと思った俊斗。
今日の夜に『余命宣告が間違いだった』ということと、自分の気持ちを伝えてもう少し同棲をしたいと言おうと決意をしているところだった。
休憩室に入ろうとすると中から社員の声が聞こえてくる。

社員A「沙織さんって社長のこと苦手だって言ってましたよ」
社員B「やっぱりそうなんだ。話しかけられると怯えてるもんね」
社員A「沙織さんって社長のこと苦手だって言ってましたよ」


俊斗、苦手だと言われてることを知ってしまい大きなショックを受ける。


第四話 おわり


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