愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
「ご両親に復縁のご挨拶をしなきゃいけないだろ」

車を降りた彼の手には、ホテルで持っていた紙袋が握られていた。
もしかして挨拶用にお菓子でも買ったんだろうか。

「そう……ですね」

すっかり失念していた私もあれだが、今日の今日で挨拶へ行くなんて思わない。
せめて、ホテルを出る前に言ってほしかった。
いきなり宣利さんが来たら両親は驚くだろう。
きっと、休みだから家着だし。

「あの!
五分!
五分でいいから待ってもらえないですか!」

「なんでだ」

滅茶苦茶不機嫌そうに見下ろされたが、両親に準備をする時間くらい与えてほしい。
母はまだしも、父の家着はTシャツにステパンなのだ。
スーツ姿の宣利さんとあの姿で対峙するなんて父が可哀想すぎる。

「連絡してないので、ちょっと準備をですね!」

「……ふむ」

拳を顎に当て、宣利さんはなにやら考え込んでいる。

「そうだな、すっかり失念していた」

だったらできれば出直してもらえないかと期待したものの。

「ちょっとそのへんを散歩してくるよ。
それでいいかな?」

宣利さんはこれで解決だって感じだけれど、よくない、全然よくない。
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