煙草を吸う女
夜に島本から電話がかかってきた。前に言われていたことなんだけど、と切り出されすっかり頭から抜けていた。そうだ、俺は沢口さんのことを探ってほしいといっていたんだ。でももうすっかり失恋しているとは言い出せず、島本の報告を聞く。
『ちゃんと仕事しつつ、聞いたんだからな』
『ごめんな、本当に』
いやいいんだけど、と島本は気まずそうにいった。
『俺、聞いたんだけど元々社内に恋人いたんだって。いつも俺の先輩と、その人と、沢口さんで喫煙所で話してたみたい。で、婚約するのもちらっと聞いて、その矢先』
嫌な汗がたらりと流れる。
『ひき逃げの事故で、植物状態なったらしくって。とうとうこの間亡くなって……』
その後の言葉は何も耳に入ってこなかった。
彼女の夢見ていたソウちゃんはいなくなっていたのだ。ひとしきり、あぁ、とかうん、とか言って電話を切った。
沢口さんが退職したと風の噂で聞いた。
家の都合で辞めるということでとても急な退職だった。営業部の皆が残念だったなと声をかけてきて曖昧に笑っていた。もう一度、家の前まできたがリフォーム業者が作業しておりここの住人は退去したと告げられた。生命維持装置がなくても生きていけるのか、それとも。俺にはもう連絡できる手段もなにもない。できることといえば。ただ煙とともに姿を消したあの人が幸せになれるよう願うように、あの喫煙所であの煙草を吸うことだけである。
『ちゃんと仕事しつつ、聞いたんだからな』
『ごめんな、本当に』
いやいいんだけど、と島本は気まずそうにいった。
『俺、聞いたんだけど元々社内に恋人いたんだって。いつも俺の先輩と、その人と、沢口さんで喫煙所で話してたみたい。で、婚約するのもちらっと聞いて、その矢先』
嫌な汗がたらりと流れる。
『ひき逃げの事故で、植物状態なったらしくって。とうとうこの間亡くなって……』
その後の言葉は何も耳に入ってこなかった。
彼女の夢見ていたソウちゃんはいなくなっていたのだ。ひとしきり、あぁ、とかうん、とか言って電話を切った。
沢口さんが退職したと風の噂で聞いた。
家の都合で辞めるということでとても急な退職だった。営業部の皆が残念だったなと声をかけてきて曖昧に笑っていた。もう一度、家の前まできたがリフォーム業者が作業しておりここの住人は退去したと告げられた。生命維持装置がなくても生きていけるのか、それとも。俺にはもう連絡できる手段もなにもない。できることといえば。ただ煙とともに姿を消したあの人が幸せになれるよう願うように、あの喫煙所であの煙草を吸うことだけである。
