情愛漂う財閥社長は、一途に不遇女子を寵愛する。
私は、皆に声を掛けると自室へ向かった。
今の格好は着物だけど、作業着のようなもの。だから、先日八尋さんにいただいた桃花色の着物を着る。
裾はクリーム色に臙脂のぼかし、流れを描くように配置されたピンクや赤紫色の小桜の花びらの上に、薄ピンク色やクリーム色のぼかしの入った白い桜の花の丸。蕊に金彩があしらわれており、控えめに輝いていた。
着替え終わってすぐに、八尋さんは訪ねてきてくれた。
「優菜ちゃん、こんにちは。朝ぶりだね」
「八尋さん、わざわざ来てくださってありがとうございます」
八尋さんとは、酒井家と藤沢家の中間あたりに新居として購入したのでそこで一緒に暮らしている。
あれから私と八尋で話し合った。二人とも嫡子で八尋さんは社長、私は当主を継いだばかりの私たちはこれからどうするべきなのかとか後継問題とかを考えた結果……しばらくはお互いに仕事をこなすことになった。
私は当主としては新米なのでいろいろと八尋さんにも教えてもらいながら酒蔵を営んでいくことになり後継は、お義父様にお互い長生きすればいいのではないかと言われたのでそれもそうかと思えたことで悩みはなくなったと思う。